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「深海」「毒」「性」!?攻めた学術系エンタメ展で水族館を盛り上げる仕掛け人たち

水族館の主役は生き物たちだが、リピーターに通わせるための仕掛けを生む、プロたちの存在も見逃せない。話題の展示の企画・立案の担当者の仕事に迫る。

photo: Jun Nakagawa / text: Ryota Mukai / special thanks: Keita Harasawa

攻めた学術系エンタメ展を次々企画

『ゾクゾク深海生物2024』に『毒毒毒毒毒毒毒毒毒展(もうどく展)』シリーズ、同じく3度にわたり開催された『性いっぱい展』と攻めた企画がいつも話題を呼ぶ〈サンシャイン水族館〉。これらの仕掛け人の一員である、今井俊宏さんと片野未奈子さんに話を聞いた。

「企画は何より面白いこと。そして新しい発見があることを意識しています」と今井さん。初めて担当した『もうどく展2』では水槽さえも新たに製作したという。「まさに0から100まで作る作業でした。空間に何をどう置いてどんな動線を作るか、ということからBGMまで考えました。展示物の解説文を書いたり、必要があれば生き物の採集に行ったりすることもあります。『もうどく展』は累計65万人の来場者数の面ではもちろん、当館の企画の中でも特にSNSで反響をいただくシリーズでもあります。そういった反応を見られるのも嬉しいですね」

ただ面白いだけではない。今井さん自身、飼育スタッフとして生き物に接しながら企画に携わっているので学術的な裏づけがある。それは片野さんが手がける企画でも変わらない。例えば『もっと♡性いっぱい展』。夜のイベント展示として生き物の性をテーマにして人気を博した『性いっぱい展』の第2弾としてコロナ禍に開催。来場者の理解を深める工夫を随所に施した。

〈サンシャインエンタプライズ〉片野未奈子さんの2020年『もっと♡性いっぱい展』の展示
片野未奈子さん担当の2020年『もっと♡性いっぱい展』の展示。夜の開催に合わせ、展示の説明パネルもネオン調にデザイン。

「飼育スタッフに協力してもらって、紙粘土やシリコンゴムで生き物たちの性器の模型(!)を作ってもらいました。サイズも触感もこだわって、楽しく学べる場になったらいいなと」。棒でツンツン触れる仕様にしたり、発情期の生き物の匂いを嗅げる展示を考案したりするなど、体験型展示にも、触れ合いに気を使う時期ならではの工夫を凝らした。結果、さらに回を重ねるヒット企画に。大真面目な攻めのエンタメが、続々と生まれている。