技術もユーモアも抜群!
注目の3人が対面。
福島暢啓
3人の共通点はなんでしょう。まずは放送マニアなところ?
春名優輝・冨士原圭希
そうですね。
福島
マニアって異質な部分が出てしまって入社試験で落とされがちなんだけど、うまく隠してアナウンサーになれると楽しいよね(笑)。
あと放送好きだからこそ、3人とも、アナウンサーの先輩、TBSの安住(紳一郎)さんに憧れているよね。
春名
福島さんもそうですが、独自の視点がさすがだなと。ただ、お2人を意識して落ち着いた雰囲気で話すと、周りからは「もっと元気よくやれ」と言われてしまって。
冨士原
それは私も言われますね。
福島
若者は元気であるべきという考えだよね。古いんだけど、周囲は「もっと自分を出せ」って無責任に言う(笑)。
アナウンサーって有名人ではないから、自分の身の回りの話ばかりをしてもリスナーは興味を持ってくれないと思うんだけどな。
冨士原
芸能人とは違いますしね。
福島
特にローカル局のアナウンサーは、自分の足で得た情報を話さないと価値がないと思うんだよね。
春名
わかります。だから気になったことは必ず取材をしています。
冨士原
私もそう心がけているつもりなのですが、なぜだか私は「変わっているやつ」だと思われやすくて。
福島
冨士原くんは22歳なのに「フーテンの寅さん」について語り上げるから、珍しがられるんだよ(笑)。
念入りに用意した話よりも
咄嗟の一言がウケる切なさ。
春名
よく訊かれる質問かもしれませんが、アナウンサーの魅力はどこにあると思いますか?
福島
制約が多い中でしゃべりの個性を出していくところ。アナウンサーという立場を覆う囲いを、越えるか越えないかのスレスレの部分で勝負するのに醍醐味があるんじゃないかと。
春名
福島さん、冨士原さんが使う独特な比喩も、ある意味スレスレのところですよね。僕も好きですが。
福島
安住さんが使う比喩が好きなんだよね。サバの棒寿司についての描写なんて最高だった。
昆布の形状を説明するのに「羊羹色の艶を抑えた昆布が繋ぎ目なく、デパートの包装紙のごとく巻かれています」と譬えていて。その絶妙さには震えたよ。
冨士原
私は福島さんが以前「3つの比喩で深みを出す」とおっしゃっていたのを聴いて、試みています。
福島
譬えというのは、1つよりも3つある方が3倍伝わると思っていて。ただ私も「伝える気がないだろ」と言われる比喩も使ってしまうこともありますよ。
ナンの大きさを「小さい方は筑前琵琶ほどで、大きい方は薩摩琵琶サイズ」なんて言ってしまったこともありました。
春名
(笑)。福島さんはどんな比喩を使うか、事前に考えていますか?
福島
考えたことを言おうとすると緊張するから、その場で浮かんだことを話します。
冨士原
私は自信がなくて事前に考えるんですけど、ポロっと言ったことの方がウケることがあります。
福島
あるね!準備した話よりも、咄嗟に思いついたことの方が反応が良いと、悲しくなる(笑)。
冨士原
そういえば福島さん、一時期ほかの人の放送を聴いて自分のしゃべりがどう変わるか、実験してましたよね?
福島
変わった人みたいに思われそうだけど、やってたね(笑)。
春名
それで言うと、冨士原さんのしゃべりも安住さんと福島さんの両方の影響を受けていてハイブリッドですよね。
昭和っぽい内容が多いのは福島さん、一人称が「あたし」になるところは安住さんの要素が入ってる(笑)。
冨士原
無意識に出てしまうんですよね。
一緒に仕事がしたいのは
真剣に考えて取り組む人。
春名
番組の中で別のパーソナリティにコーナーを引き継ぐ場合、番組の流れをいかに作るかが今の自分にとっての課題なんですが、お2人はどうされてますか?
福島
連続性を持たせることが大事だよね。例えば、流れが止まってしまうのを避けるために、CMに入る前に明けた後との関連性を作ることが大切。
それが上手なのが、『ジェーン・スー 生活は踊る』(TBSラジオ)のキャスター、小森谷(徹)さん。
おすすめの商品を紹介するコーナーを担当されているのですが、コーナー前のCMが入る直前に小森谷さんが登場して後々紹介する商品に関連したエピソードをさりげなく語るんです。
だからCMをまたいでも流れが切れなくて。こんなふうに番組全体のことを真剣に考えている人は貴重ですよね。
冨士原
なるほど。勉強になりますね。お2人は、ほかにも気になるアナウンサーはいますか?
福島
RBC琉球放送の嘉大雅アナウンサーが気になります。闇の部分があると言っているけど、明るいトーンのしゃべりが良いですね。2人はどうですか?
春名
RCC中国放送の伊東平アナウンサーはラジオでの高めのテンションも好きです。あとはRBC琉球放送の鎌田宏夢アナウンサー。仕事に取り組む姿勢が真摯。
冨士原
テレビですが、TBSの情報番組『ゴゴスマ』の石井亮次さん。古舘(伊知郎)さんが紅白の司会をしているところを完コピできるそうで、変態チックなのが気になります。
福島
石井さんは昨年末にCBCラジオで放送された特番『ルーツ』で古舘さんと共演していた時も放送マニアっぷりを発揮してたよね。プロのせめぎ合いを感じてしびれました。
やっぱり、しびれさせてくれる放送は励みになります。僕らももっといろいろな人をしびれさせないと!
マトリックス表で見る、
今アナウンサーが輝く番組。
十人十色の語り口は、
聴き比べればもっと面白い!
アナウンサーの語りに凝縮されているのは、聴く人を惹きつける技。そのタイプによって、注目番組は主に3つに分けられる。
まずは安住アナを筆頭に、福島アナ、春名アナ、冨士原アナの番組(1〜4)が属するのは、マイルドな語り口にサラリと本音を織り込ませる「新潮流型」だ。
一方で口数が多く、癖も毒もあるものの一度ハマると抜けられなくなるのが「コアファン型」。『平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま』(7)で、朝9時の冒頭からトップギアで展開されるフリートークでは、横山アナの飾らない本音が溢れ出る。
そして一見さんも参加しやすい「絶対的安定型」は、落ち着いた語りから賑やかなおしゃべりまで、終始リスナーを取り残さない。
例えば『源石和輝!抽斗!』(14)では、「ながら聴き」でも言葉を逃さないほどの聴き取りやすさが嬉しい。
ただし源石アナの好物・鉄道の話になると急に早口になるのでご注意を。ぜひ聴き比べてお気に入りの番組を見つけてほしい。
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