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3賢人が考えた、何度でも観たいアニメ映画 Vol.5「音楽」

数々のアニメ映画を観倒してきた3人の「今こそ観直したい50作」とは?配信やDVDで今すぐ観られる名作を中心に、6つのテーマに沿ってセレクト!偏愛も暴走愛もありの“極私的・推し映画”を語り尽くします。激論!50作品決定座談会。Vol.4「フェティッシュ」はこちら

text: Masae Wako

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ライブシーンこそ音楽アニメの醍醐味!

高橋克則

ここからは「音楽」を楽しめる作品です。そのものズバリのタイトル『音楽』('19)はバンド活動を始める高校生の話で、声優を坂本慎太郎や岡村靖幸が担当しています。

藤津亮太

シンバルのないドラムとベース、リコーダーだけですごく面白いっていうシンプルさがいいですよね。

青柳美帆子

私が音楽的衝撃を受けたのは『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』('93)。小学生の頃にレンタルビデオを1週間借りて何度も繰り返し観て、それでも足りなくてお母さんにもう1週借りてもらったほど。ただ、いろんな人に薦めたけど男性はなかなか観てくれない……。

高橋

そう?観なきゃいけないアニメ映画の筆頭に挙がると思うけど。

藤津

それは僕らが住んでる界隈の話だから(笑)。何回観ても楽しいし、ファンに愛されてるなあと思うのは『KING OF PRISM by PrettyRhythm』('16)。あとは『ONE PIECE FILM RED』('22)も音楽がいい。そういえば、尾田栄一郎さんは友達に連れられてキンプリと思われる作品の応援上演を観に行ったんだよね。超面白かったってコメントを出して、瞬時にTwitterでキンプリがトレンド入りしてた。

2013年のTVアニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』の公式スピンオフ。男子プリズムスター3人による新ユニットの活躍を描く。応援上映という観賞スタイルは本作から広まり、公開後6年経った2022年も続いている。'16/監督:菱田正和

青柳

ライブシーンの楽しさも音楽アニメ映画の醍醐味で、その点では『劇場版マクロスF 〜サヨナラノツバサ〜』('11)に1票。

藤津

僕は『ラブライブ!The School Idol Movie』('15)。アイドルもののアニメって普通は引退を描かない。なぜならアイドルは永遠だから。でも『ラブライブ!~』は卒業というギミックで終焉までの道筋をちゃんと描いている。特に劇場版は、人生の岐路に立った人が何を思うかみたいなことが表現されているから面白いんです。

高橋

じゃあ僕は、全編ライブの『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEキングダム』('19)を観に行った話を。僕以外の観客の全員が女性だったんですけど、途中でキャラクターの寿嶺二(ことぶきれいじ)を演じる森久保祥太郎のMCコーナーがあるわけです。

まず彼が「音楽が僕と君を繋ぐ。マイガールも?」と観客に話しかけ、その後に「マイボーイも?」と続ける。(えっ、ボーイって俺だけじゃん)と戸惑ってたら、男性客の反応が少ないのを見て「マイボーイも!」と念押しするんです。森久保祥太郎が、俺だけのために、2回も話しかけてくれた……!

青柳

最高じゃないですか。

高橋

完全にテレビ版エヴァの最終回のシンジ君の心境ですよ。

青柳

僕はここにいてもいいんだ(笑)。

高橋

全編ライブの映画って面白いんですよね。『うたプリ』は新作でも2週目だとアンコール曲が変わっていて、その曲が選ばれた文脈によっては泣いてる人もいて。

青柳

わかります、わかります。私は『リョーマ!The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』('21)を推したいのですが、とある展開で会場中号泣。ファンでいてくれてありがとう~みたいな、こちら側の人生を肯定してもらえている実感があるんです。

藤津

ミュージカル映画だと、政岡憲三監督の『くもとちゅうりっぷ』('43)は、やっぱり素敵なんだよね。

高橋

戦時中にこんなの作って歌ってたの?ってびっくりします。

藤津

政岡憲三の作品は、DVDに入っている短編アニメ『春の幻想』がしみじみ良くて、舞妓さんの舟遊びをスケッチしたアニメが、音楽に合わせて流れるだけなんですけど、そのクオリティたるや。

青柳

観てみたいですね。

藤津

既成曲の使い方のうまさでいうと『銀河英雄伝説 わが征くは星の大海』('88)で戦闘シーンに流れる「ボレロ」はばっちりです。

高橋

『銀英伝』の戦闘シーンは、宇宙なのに艦隊は平面的に配置するという、ちょっと考えたらヘンな状況なんだけど、ボレロが流れることによって、「これはある種、クラシカルな様式美にのっとった戦いなんですよ」という説得力が生まれるわけです。

青柳

『犬王』('21)も、というか湯浅監督の音楽の使い方も面白い。

藤津

湯浅さんにとって音楽は、自分を解放し、あるべきところへ連れ戻してくれるものなんですよね。『マインド・ゲーム』でも、「生きるとは?」みたいな本質的なことは長い音楽シーンとともに語られる。そのスタンスは一貫していると思います。

青柳

ただし『犬王』は、歌えば歌うほど自由になっていくわけではない。精神は解放されるんだけど肉体的には規範的な普通の体になっていく。その逆転の構図がさすが!

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