先生:川井久恵(『アニメージュ』編集長)、土居伸彰(アニメ評論家)
家族との距離感がわかりません
『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』
病気の陽毬(ひまり)と双子の冠葉(かんば)と晶馬(しょうま)は、血がつながっていなくても、確固たる結びつきがあって仲がいい。家族は血縁よりも、思いやる気持ちの方が大事なはず。
本作を観ると、相手を気遣う言葉の積み重ねで家族が成り立っていくのだということが感じられます。私は一人っ子なので、彼らの関係が羨ましいです。
『わからないブタ』
アニメーション作家・和田淳さんの作品。YouTubeで視聴可能です。謎めいた家族とブタを俯瞰で描いていて、人間も動物もさほど変わらず、ある程度本能で動いているように思えます。
嫌だと感じる家族の言動も、その人の本能だと考えてちょっと距離を置けばいい、と学べる。わからないものはわかろうとしなくてもいい、ということも実感できます。
人付き合いが苦手です
『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙(そら)編』
アムロは今風に言えば、陰キャでコミュ障でこじらせまくった少年。自分をわかってほしいという承認欲求の塊でもあります。
ニュータイプとして目覚めることで、言葉を介さずに相手と意識を共鳴し合えるようになるわけですが、現実にはそんなことはないものだし、やはり言葉にして伝えないと相手はわからないよね、とも思うんです。
『映画 聲(こえ)の形』
本作は、繊細すぎるがゆえに深く傷ついたり、距離感がわからずに相手を傷つけたりと、人付き合いが苦手な人の実例のオンパレードです。
でも、苦手なのはしょうがないことで、見方を変えれば繊細だからこそ、人間関係の素晴らしさや、コミュニケーションの大切さ、身近にいて、自分を受け入れてくれる人のありがたみを感じ取ることができるはず。
『映画 ふたりはプリキュア Max Heart』
「女の子だって暴れたい!」というのがプリキュアの原点。肉弾戦で戦う女の子たちの大活躍がジェンダーのモヤモヤを吹き飛ばす。
同シリーズではワンオペ育児や職業の多様性を盛り込んだり、「男の子だってお姫様になれる!」というセリフが飛び出したりと、さまざまなテーマを描いているのも特徴。年齢や性別を超えて、勇気づけられます。
『イノセンス』
アニメーションはキャラ付けが必要なため、男・女らしさがこびりつきやすい。これらは些細な動きや言葉遣いにすぎず、人間や人形とは何かを問う本作を見ると、それが作られたものでしかないことに気づけます。
もしくはバトーのように犬を飼い、男らしさ・女らしさを求められない関係性に逃げるのもあり。彼も男らしさを求められて苦しかったのかも。