各視点で語る“手描き”の魅力
中村佑介
コピックのマルチライナーは、高校時代から今の仕事までずっと使っている身近な画材。だから今回のアワードに審査員として参加できて嬉しかったです。
落合翔平
僕も普段、コピックを愛用しています。今回は、コピックを使った作品であれば平面も立体もOKという条件でいろんな作品が集まりましたが、こんな表現もあるのかと驚くポイントが多かった。
板垣巴留
コピックは憧れの存在。学生の時は1本ずつ買い足して、大切に使っていましたね。そんなコピック作品のコンテストに関わることができて光栄です。
中村
世界から集まったイラストに、各国の流行を感じて新鮮でした。例えば同じアジア圏でも、台湾からはコミック調の作品が少ないとか。個人的総括としては、かわいいキャラが描かれているだけより、背景に作者の感情やテーマが宿った一枚の方が作品としてパワーがあると感じました。
板垣
私は仕事柄、物語性のある作品に強く惹かれたかな。「描かれている人物はどんな人なんだろう」というように、想像力が刺激される作品に目が留まりました。
落合
画像審査の段階ではピンとこなかったけど、原画を見て評価を変える作品がけっこうありましたよね。描き手の創意工夫や感情が浮き上がってきていいなと。
中村
僕もそうでした。近年のデジタルを含むイラストコンテストではAIの活用が問題になっていますが、今回は手描き限定。手描きであること自体が作者の存在を証明している点に、アナログ作品ならではの可能性を感じました。筆圧や塗り方などの細かなニュアンスが、描き手の感情や熱量もダイレクトに伝えてくれます。
落合
わかります。自分は普段、アナログで描くなかで、塗りムラを大切にしていて。デジタルでは簡単に修正できる不均一な要素が、人間らしさを際立たせる。改めて今回の審査中にも感じました。
板垣
私の場合、最近までフルアナログで漫画を描いていたんです。そうすると、原稿がインクやトーンで物理的に重くなってくる。不便な点も多いですが、重さや手触り、匂いなど複合的な理由で「作品がここにある」という存在感を得られるのも、手描き作品の魅力の一つだと思っています。
中村
最近はプロの目から見ても、デジタルとアナログの区別がつかなくなっている。僕は手描きの方が特別優れているとは思いませんが、こうしてアナログ作品を眺めていると、やはり原画からしか伝わってこないものは確かに存在する。その不思議な魅力が見る人の感性を刺激し、新たな想像力をもたらしてくれるのでしょうね。