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人生の先輩に聞いた、愛の映画。「愛って、いつも不完全で、引き際が肝心」

生きるほどに、見聞き体験することは自分の中に折り重なっていく。愛の観念だってきっとそう。年を重ねた今、愛をどう捉えているのか?先輩、教えてください!

本記事も掲載されている、BRUTUS「愛って。その答えが見つかる名作映画300」は、2023年11月1日発売です!

photo: Shu Yamamoto / text: Ryota Mukai

愛の映画世論調査〜経験豊富な人生の先輩編〜

date:10月16日(月) PM2:00
place:アメニティーライフ八王子

愛って、いつも不完全で、引き際が肝心

濱田利

「愛」と聞いて思いつくのは、男女関係じゃなくてヒューマンラブ。『東京物語』では老夫婦に対して、実子の誰よりも義理の娘が優しく接してくれる。原節子さんが演じる彼女は家族を通り越した愛がありますね。

木原多枝子

小津安二郎監督の映画はどれも家族愛を描いていますね。ほかの作品だと、『秋刀魚の味』も好きです。

遠藤幸子

私は『男はつらいよ』の寅さんに愛を感じます。相手を思いやるでしょう。

水野寛子

相手を立てて譲っていくんですよね。「奮闘努力の甲斐も無く……」って。恋は成就しないから、寂しくもあるけれど。

遠藤

私も昔、思っていたけれど、相手にその気持ちを伝えられないということがありました。今の時代には「言えばいいのに」って言われちゃうかもしれないけど。でもそれは心にずっと残るから、ロマンティックなんだと思う。だから悲恋の映画に惹かれます。寅さんを観ていると涙が出てくるし、『慕情』や『哀愁』『旅情』も好きですね。

水野

思えば私も若い頃はあまり好きじゃなかったけど、感じ方が変わったのか、40代を越えた頃から寅さんが大好きになりました。あとは『ローマの休日』は何回も観た。昔の映画館は入れ替えなしでずっと座っていられましたしね。これも最後の引き際の寂しさがいい。

愛に完全なものはありませんから。私の親の世代は顔もしっかり見ずに見合い結婚したけれど、それでも素敵な家庭を作りました。愛はあるものではなくて、育てるものなんですよね。

羽村裕文

私は『幸福の黄色いハンカチ』のラストシーンに胸がいっぱいになります。それに「愛」というと一人一人ではなくて、もっと大きなものを想像しますね。そういう意味で、一人の尼僧のふりをした歌手が聖歌隊だけでなく修道院全体までも楽しく変えていく『天使にラブ・ソングを…』は愛の映画だと思います。

アメニティーライフ八王子の皆さん
左から、木原多枝子さん、濱田利さん、遠藤幸子さん、水野寛子さん、羽村裕文さん。71歳から94歳までの5人が揃った。住まいである、生活支援から介護サービスまで提供する高齢者施設〈アメニティーライフ八王子〉では月に1度映画上映会も開催。ほかに絵画、パソコン、植物、音楽などサークル活動にも取り組んでいるそう。

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