ご近所の方が気軽に立ち寄れるように
東急大井町線・中延駅から、大きなアーケード商店街を抜けること5分。のんびりした雰囲気の住宅地の一角に、2022年11月13日にオープンする〈春の雨〉。まだピッカピカの店内には、すでにレコードが並んでいる。
「サラリーマンとして会社勤めをしている中で、コロナ禍になり、改めて自分がやりたいことを考えたんです。元々はミュージシャン志望だったので、音楽に携わる仕事がしたいと考えました。同時に、なにか地域の役に立てることはないかと思ったんです。中延に住んで10年、本当にいい街なので、ご近所の方が気軽に立ち寄れるレコード店兼カフェを営もうと思いました」と、〈春の雨〉オーナーの中澤敬さん。
店内はテーブル席と、そしてコーヒーを飲みながらレコードが見られるよう、ラックにも工夫が施されている。
「実は近所にあまり喫茶店やコーヒースタンドがなかったので、自分でもこういうお店が欲しかったんです。店舗経験などなかったので、レコードの仕入れなど、一から自身で始めました。各レーベルのHPからコンタクトして、買い付けたものもあります。中でも“静寂の次に美しい音”として知られるドイツの〈ECMレコード〉から販売の許諾が取れたときは嬉しかったですね」
赤ちゃんの泣き声もお店でかかる音楽のひとつ
お年寄りから子供までがゆっくり過ごせるように、Tomotsugu Nakamura『Nothing Left Behind』や高木正勝の『Marginalia Ⅳ』などのアンビエントや、ピアノソロのクラシックなどが流れている。
「本来、アンビエントは環境音楽というだけあって、騒音やノイズも包括して完成する音楽だと思っています。赤ちゃんの泣き声も、お店でかかる音楽のひとつの要素という考え方ですね。近所には中延温泉・松の湯があるので、風呂帰りにクラフトビールでくつろいでくれるようなお店にしたいと思っています」
店舗のオープンに先駆け、webサイトでのレコード販売が始まっており、その品揃えから、早くも好事家から注目を集めている。そんなレコードディガーと、親子連れや近所の御隠居が同居する場所。そこで求められているのは、空間を和ませる、静かなアンビエントではないだろうか。
記事で紹介したアンビエントの一部はSpotifyでも視聴可能。