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内省的でピュアな、新しいヒップホップとは。シーンの魅力をvalkneeが解説

ヒップホップのメインストリームから遠からぬ場で、多様な進化を遂げるオルタナティブ・ヒップホップ。その魅力を自身もラッパーとして活躍するvalkneeに教えてもらった。

text: Tsuya-chan

数万人規模のフェスが次々と開催されるなど、近年大きな盛り上がりを見せる国内のヒップホップ。一方、そういったメインストリームと遠からぬ場で、多様な進化を遂げるオルタナティブなラップシーンも生まれてきている。

多くの才能あるアーティストがひしめいているが、一つの音楽性では括(くく)れないため言語化が難しく、メディアでも紹介されることが少ない。

自身もラッパーとして活動するvalkneeさんは「アンダーグラウンドではこんなにも盛り上がっていてリアルな音楽がたくさん生まれていることをもっと知ってほしい」と、仲間とともにSpotify上でプレイリスト「Alternative HipHop Japan」を立ち上げた。

次々とリリースされる最新の楽曲から、ここ数年支持を集めてきたアンセム曲まで、文脈が伝わる魅力的なプログラムになるよう更新を重ねている。

「ヒップホップだけでなく、ボカロミュージックやパンク、アンビエント、さらにインターネットカルチャーなどが混在した、今のユース層らしいジャンルレスな音楽性がこのシーンの特長」とのことだが、そこには、お金や手間がかかるバンドよりもラップやDTMという手法の手軽さが支持されている側面もあるという。

似た傾向は歌詞にも表れており、従来のヒップホップの価値観に見られる金持ち・モテ自慢ではなく内省的でピュアな内容が多い。「カッコつけないカッコよさ」にリアリティが宿っており、多くの若者が自身を投影し魅せられている。

「今後はこのプレイリストを軸にしたイベントもやっていけたらと考えています。今はロールモデルがいないので、プレイリストの規模を大きくして、アーティストが目指す場所を作りたいです」

valkneeが選ぶ、注目の5曲

「Hate Goodbyes」 J1rock
感傷的で繊細なメロディとテクスチャーが、多くの若者を虜(とりこ)にしている。早くもあのSEEDAが曲中で「J1rockは既に光るダイヤ」とネームドロップしたことも話題に。
「冬がすぎたら」 nyamura
天使のモチーフを反映した儚(はかな)いムードでTikTokを席捲中。「この界隈のアーティストはヒットしてもライブではまだ小箱でやることが多いので、身近な存在。ぜひ生で観てほしい」
「ピンポンパンポンようこそ」 pinponpanpon
STARKIDSのメンバー・Space Boyがプロデュース。「令和のバッドギャル。原宿カルチャーがデジタルな質感でキラキラとエクストリーム化した感じ。今の時代が記録されていると思います」
「Cinderella ft. Filix王」 Sad Kid Yaz
パンクとギャル男が出会ったような等身大のスター性。「”飲んでる渋谷それか三茶” ”Luupで茶沢潰れた下北”といったリリックに、大学生のやんちゃで気さくな日常が詰まってます」
「07:19:32」 safmusic
「朝方の澄んだ空気を彷彿とさせるアコースティックな手触りが特長です。このシーンに馴染みのない人も聴いてほしい」。プロデューサーとして他アーティストに楽曲提供も。