日本各地から顧客が訪れる、
秘密の隠れ家
大宮区役所付近の穏やかな参道沿いのマンションの地下にある店、〈ホワイトアルバム〉。所在地を知らないとなかなか辿り着けない立地だ。だが、ここは知る人ぞ知る隠れ家ショップ。魅力は、オーナーの人柄にある。
「接客はもともとあまり得意ではないんです。だからこそ、まずは相手のことを知ろうと服と関係のない話から始めるんです。音楽やアート、釣りにカメラなど、共通の話題で盛り上がって、数時間しゃべり通すことも。仲良くなったお客さんが結婚式に呼んでくれたこともあります。一度関係をしっかりと築いたら、長いお付き合いになるお客さんが多いですね」
恥ずかしそうに笑みを浮かべながら話す赤羽恭一さん。独立前は大手セレクトショップでバイヤーとして働いていた。
「当時は40ブランド以上を買い付けていたので、すべての商品に愛着を持って接するのがとても難しかったです。その反動で自分の店では、店内に服を並べることが少ないのかもしれません。30着以上にならないように、バランスをいつも考えています。
内装は、よりパーソナルな空間にしたくて、自分の部屋のように組み立てました。好きな映画のポスターやレコード、家具、自転車に囲まれた空間で服を売る、この環境が居心地よくて。今だから言えますが、オープンしたばかりの頃はお店で寝泊まりしてた時期もあります(笑)」
数年後は一着も服がないかもしれないし、ラックいっぱいに掛かっているかもしれない。〈ホワイトアルバム〉は赤羽さんの店であり部屋だから、変化は常なのだ。
「“ホワイト”はブランクの譬え。ブランドが曲で、一枚の“アルバム”に入っているという意味で店名をつけました。形がないからこそ、自由を楽しめるんです」