地元で、楽しいことだけして、
生きていく。
アパレルの世界に限らず、若者なら一度は夢見る、「仲間たちとワイワイ好きなことだけやって生きていく」。時代に合ったシェアスタイルで、それを実践しているのが〈トゥー プライ ヤーン〉だ。
店名は「双糸」を意味し、撚り合わせることで一本よりも強くなる。代表の青木和裕さんが同級生たちと、元・お茶屋の古風な建物を借りて始めた。
共同経営のコーヒースタンド、レザークラフト工房やレゲエバー、アップサイクルアクセサリーの店まで。隣には商工会議所があり、行政の相談も受ける。人口が減りゆく鹿島を盛り上げる存在として注目されている。
青木さんは、高校卒業後に愛知の工場に勤めたが、リーマンショックで仕事が激減。服飾の専門学校に1年通い、大阪のアパレルメーカーに転職して企画や卸を学んだが、今度は会社倒産の憂き目に遭い、独立を決意。神戸に店を開いた後、家族ができ、子育て環境なども考えて、地元・鹿島に戻ることにした。
「いつかは地元で、と思ってたから、今がその時だなと。大阪時代のつながりもあるし、グラフィックデザイナーの仕事もあるので、場所はどこでもやっていけると思って」。
そして、仲間たちと一緒に地元に根を張れる安心感も、都会では得難いもの。「なんせ幼稚園から一緒。考えてることも、やりたいこともお互いわかってますから」
縁を大切にする青木さんらしく、お客との結びつきも強い。バイイングではオススメしたい人の顔が浮かび、LINEで入荷連絡もできる。地元の中高生たちとのつながりも増えてきた。
「若い子たちに夢を与えたいんですよ。鹿島でだって、自分のやりたいようにできるって。町で商売させてもらってるからこそ、町の子たちの頼れるアニキでいたいですね」。
カルチャーはこうして町に引き継がれていく。