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福井〈タルクライン〉オーナー夫婦は造形作家。2人の美意識が交錯するお店

地方のセレクトショップがますます面白い。ブルータスが主観で絞り込んだ、とっておきのお店をご紹介します!

Photo: Tetsuya Ito / Text: Chisa Nishinoiri

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オーナー夫婦は造形作家。
2人の美意識が交錯する空間。

巨大なアガベが育つ前庭を抜けてガラス扉を開けると、広々とした空間に洋服、雑貨、ジュエリーやアートピースがギャラリーのようにゆったりと展示されている。

福井〈タルクライン〉外観
旧国道に面したショップの裏側。ネオン管を配したショップ看板はグラフィックデザイナー秋山伸の作品。店名「talklein」は、ドイツ語で谷口さんの「谷(tal)」と小西さんの「小(klein)」を組み合わせた造語。

商品なのかディスプレイなのか。その境界線は曖昧で、一見して見分けがつかないのは値段やブランド名を記した説明書きの類いが一切置かれていないから。

「お客さんとコミュニケーションを取るきっかけになればと、あえて表記していません。作り手の思いやストーリーを、自分たちの言葉で丁寧に伝えたいから」とショップオーナーで造形作家、インテリアデザイナーの谷口かおりさん。

1階はセレクトショップ〈タルクライン〉、2階は谷口さんと、ジュエリー作家の小西潤さん夫婦のアトリエ、3〜4階は居住空間。1970年に建てられたビル一棟をリノベーションし、職住一体型のライフスタイルを送っている。

店には、学生時代からの友人が手がけるコモリの洋服に始まり、ベルリンをベースに活動する濱田明日香によるテリアカ、スーザン・ピーチ、フェリクス・リンドナーら個性が光るジュエリー作家の作品、東亨の金属オブジェなどなど。
共に作家活動も行う夫婦がゆかりのある作り手たちの作品を集めているとあり、一筋縄ではいかないセレクト。

さらにカウンターからハンガーまで、店で使っているモノのほとんどをオリジナルで制作しており、什器以外はすべて購入可能。
可動式の什器はシーズンや展示内容によって変幻自在にレイアウトを変えるから、訪れるたびに違う表情で迎え、空間には2人の趣味と美意識がたっぷりと詰まっている。

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