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茨城〈サンタセッ ギャレリー〉アドレス非公開のアポイント制、米蔵跡地に作った秘密基地

地方のセレクトショップがますます面白い。ブルータスが主観で絞り込んだ、とっておきのお店をご紹介します!

Photo: Yasuyuki Takaki / Text: Yukihisa Takei

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アドレス非公開のアポイント制、
米蔵跡地に作った秘密基地。

ネットやSNSの普及も手伝って、あえて所在を明らかにしない隠れ家的ショップが都市部には増えている。その波は地方にも広がり始めているのかもしれないが、ここはその究極とも言えそうだ。JR常磐線の牛久駅から車で10分ほどの場所に2021年夏オープンした〈サンタセッ ギャレリー〉の周辺はほとんど民家や農地。

石造りの米蔵の構造を生かした物件には看板もないので、ここが店だと気づく人はまずいない。そして入口の重い鉄扉を開くと、中は想像以上の空間が広がっていた。

茨城〈サンタセッ ギャレリー〉店内
常駐はしないがオーナーの大貫さんが接客することも。壁の木枠は米袋を傷つけないために米蔵に備え付けられていたそのままを生かしたもので、取材時に掛かっていたのはナバホのヴィンテージラグ。

店のオーナーはウエストオーバーオールズ、オールドマンズテイラーなどのディレクションも手がける大貫達正さん。アメリカのサンタフェが好きすぎて、屋号も自分の名前の「タッセイ」にかけて〈サンタセッ〉に。

「今の時代は場所というよりロケーションの方が重要」だと考え、自らの出身地で見つけたこの物件に、サンタフェの〈シップロック・ギャラリー〉やパリの〈ギャレリー・パトリック・セガン〉など、自分も好きなギャラリー型ストアのコンセプトを持ち込んだ。

陳列された品の数々は、アメリカやヨーロッパのファッションに造詣の深い大貫さんが選び抜いた「好きなもの」だけ。

デニムにも深い情熱を持つ大貫さんが「世界最高のこだわり」と認める岡山の職人を口説いて作ったオリジナルのジーンズから、15世紀のインディアンジュエリー、日本の襖をアートで解釈したフスマ、そしてピエール・ジャンヌレのチェアに至るまで、そのアイテムも幅広ければ、価格もピンキリ。それがこの空間の中では不思議な統一感を醸し出している。

ギャラリーというコンセプトをもとに、セレクトで集められた服や小物などの商品は定期的に入れ替える予定。今後もさまざまな企画を準備中だが、所在地は非公開。その行き方はインスタグラムのDM経由でのみ知ることができる。

茨城〈サンタセッ ギャレリー〉店内
田畑や豪農の家に囲まれた、茨城県牛久方面の一角に、外からは窺い知ることができない、特別な空間が広がる。石壁から米袋を守るための木のルーバーは、そのまま活用した。

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