店作りにもセレクトにも通じる
“温故知新”の信条。
入り組んだ小道に古民家が並ぶ南市町。そのひっそりとした路地裏にこの店はある。「1990年代、ナンバーナインやアンダーカバーに憧れていた頃、迷いながらようやく店に辿り着いた時の高揚感が忘れられなくて」。
服飾業界でキャリアを積んできた店主の高橋渉さんは、夢だった自分の店を持ちたいと一念発起して開業。繁華街の喧騒から一歩隔たった風情溢れるこの場所で2月に店をオープンさせた。
「心から惚れ込んだ服の良さを直接伝えられるのが、小さく一人でやっている醍醐味です。でも、接客はガツガツしすぎないように(笑)、お客さんが気持ちよく商品を見られる距離感を心がけています。地元に愛される息の長い店にしたい」。
イチオシと語るマーテーアンドサンズのように、ヴィンテージやワークウェアの発想を現代的な日常着に落とし込んだ、作り手のこだわりが詰まった服だけを厳選しているのは「古き良きものを知らなければ、新しいものを作れない」という信条があるから。服への深い知識と愛情が感じられる。
「とはいえ、服は毎日着てなんぼ(笑)。気を使うのは嫌なんです。洗濯しやすい、奇を衒わない、町の景色に馴染む。長く愛用できる上質なデイリーウェアの魅力を少しずつでも伝えていけたら」。
取材と入れ違いで学生風のお客さんが入店。外から見ていたら、高橋さんの説明に熱心に聞き入っていた。