カテゴライズできない魅力を放つ
モード+αのブティック。
貿易港があることで昔からハイカラに栄えた神戸はファッションの町としても知られている。が、いにしえのコンサバに収まることなく「前のめり」に孤軍奮闘するブティックが三宮の外れにある。
「ファッションの熱量を僕らは追い焚きし続けないといけない」と話すのは23歳で店を始め現在11年目の代表・宮崎雅也さんだ。
「最初はお客さんがまったく来なくて。店を続けるためにスーパーでバイトしてました。自分は社会に不適合(笑)。だけど、唯一服が好きなことが社会との接点なので続けるしかなかったんですよ」
セレクトはモード一辺倒でもなく、ストリートに特化しているわけでもない。いわば洗練の「カオス系」。一癖も二癖もある、攻めたアイテムが並んでいる。
柔道着のような刺し子ジャケットや、複雑なパターンのパッチワークパンツなど、もはやアートピースを眺めている気分にもなるが、店名がサンスクリット語で“解放”だと聞けば、彼がファッションをどう捉えているのか、が見えてくる。
「服を売ってるんですけど服の裏側にある考えまで売っていると思っていて。デザイナーの熱をそのまま伝えることを一番大切にしています。(セレクトの基準は)究極を言えばデザイナーの人間性。服が良くてもデザイナーがクソだったら、心に引っ掛からない」
彼に信頼を寄せるデザイナーも多く、現在ショーを手伝っているブランドもあるそうだ。
2018年には徒歩30秒の場所にスペース〈Sal〉を設けている。サルバム、コウザブロウなど4つのブランドを主軸としたギャラリーのような空間。
ここで突然、陶器を扱い始めるなど予測不能なのだが、それこそ「カオス系」の引力でもある。
「いつも変わるから新鮮」と取材時、姫路から通う常連さんも話してくれた。安易にカテゴライズされないこんな店こそがファッションの町の一歩先を、ひそかに支えている。