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山形〈ギア〉地元企業が手がけるセレクトショップが一大観光スポットに

地方のセレクトショップがますます面白い。ブルータスが主観で絞り込んだ、とっておきのお店をご紹介します!

Photo: Daisaku Ito / Text: Shigeo Kanno

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地元企業が手がけるセレクトショップが
一大観光スポットに。

東京でも既に知られた山形の名店〈ギア〉。実際に行ってみると、今や観光バスが横付けされる“山形ツアーコース”に組み込まれるほどのショップになっていた!それゆえ客層も10〜80代と想定外の広いレンジで、ハイブランドや新進気鋭ブランドの洋服をマダムたちが手に取るという、ほかでは見かけない光景が。

山形 寒河江〈GEA〉店内
2階にはメゾン マルジェラのブースが併設。奥には自社ブランドの販売コーナー。

1932年に山形県寒河江市で創業した佐藤繊維は、ファッション業界では誰もが知る老舗企業。そんな老舗が、セレクトショップを経営するという勝負に打って出たわけだが、その理由は?

「自分たちのもの作りをもっと知ってもらいたい、受け身でいるだけじゃなく自分たちから発信する場を作っていきたい」と話すのは、同社の取締役、古城信一さん。登録有形文化財に認定されている店舗は、地元の酒蔵を佐藤繊維が譲り受け、移築し、工場として使用していた建物。

店内には、工場で使われていた紡績機がディスプレイされ、繊維産業の歴史の一部を垣間見ることができる。最先端ファッションと歴史的建築物が融合した空間は、現在と過去が交錯したかのような不思議な雰囲気だ。

山形 寒河江〈GEA〉店内
1階のメインディスプレイに使用されているのは古い紡績機。壁際からは工場の機械音が流れる仕掛けも。

「長きにわたり地元で繊維業を担っていますので、本当にいい服を見極める自信があります。自社のセレクトショップでそれらを販売し、地元独自の文化の発信地になればと考えています」と古城さんは語る。一般的に、紡績業は、B to Bのビジネスモデルだが、〈ギア〉の存在がB to Cのビジネスモデルをも可能にした。

地元産業が、県外からの人々にも幅広く受け入れられるさまは、まさに、地方活性化の成功例といえる。セレクトショップを通して、地元の魅力を世界に発信している〈ギア〉は、今後どんな仕掛けで、我々を驚かせてくれるのだろうか。

山形 寒河江〈GEA〉店の外観
右の石蔵がファッションの〈ギア1〉、左はライフスタイルショップ〈ギア2〉とレストラン・和食処〈ギア3〉が併設されている。山形の銘品コーナーも人気だ。実はこの石蔵、もともと別の場所にあったものを一度バラして組み立て直しているというから驚き。

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