港のレトロビルに集結した、
内外の職人仕事の妙
北九州の若松区にある〈ドレスウェル〉。2021年7月末に移転したばかりだが、天井の高い空間にヴィンテージの家具や抽象画、厳選されたアイテムが並び、その佇まいはどっしりと落ち着いている。
さぞベテランバイヤーの店かと思いきや、代表の多田浩平さんは40代前半。「私は凡人中の凡人ですから」と物腰柔らか。エンドユーザーの気持ちを大事にした“玄人すぎない”セレクトを心がけているという。
例えば、シャツなど肌に直接当たるアイテムは、着心地を最重視。「服に詳しくない人でも、肌触りの良さや動きやすさは、試着すればすぐにわかる。生地の良さや技術力の高さは、その裏打ちとしてあればいい」。
さらに、定番品に関しては店に並べる前にできる限り自分たちで着倒して、実用性を確かめるという。「洗濯表示よりわざと手荒に扱って、それでも魅力を保つものだけを残します。お客さんに嘘はつけないですから」とは、共同経営する妻の美保さん。
買い付け時も気になるものはすべて試着。デザイナーにも臆せず相談や要望をする。「だからやたらと時間かかって」と2人は笑うが、展示会での目利きが顧客の信頼に直結。近県にもファンが多い。
店内には、そうして選ばれた信頼できる日本メーカーのほか、イタリアのタンナーや靴職人との独自ルートを活用したセミオーダーブランドも。所有欲を満たすハイブランドよりも、使って満足、プライスにも納得感のある手仕事の際立つモノを厳選して取り揃える。装うことの妙=ドレスウェルの提案が、大人のファッションに風格を与えてくれる。