小粋な既製服を売るだけじゃない、
老舗店の妙がここにあり。
アメリカンクローズを扱う“粋な老舗”はいくつか思い当たるが、徳島の〈ボーイズマーケット〉はそれらの店とは似ているようで大きく異なる。
袖を通した時の馴染みが良くなるよう、ジャケットは陳列する前に必ずクリーニング店で洗いをかけたり、裾上げだけでなく、ウエストや太もものリサイズ、コートのシェイプなどのディテールチェンジまで請け負ったり、セレクトショップの域を超えたサービスの数々があるからだ。
「僕らの時代はVANショップだったけど、とにかく格好つけて店へ通った。それでも店員はやはり一枚も二枚も上手でね。僕は今でも店主の着こなしを見て若い子が育つと思っている」と話す津保好宏さんは35年前に古着店としてオープン。
当時は“こんなボロい服を息子に売りつけて”と顧客の親から苦情が入ったこともあったというが、そんな中で見出していったのが、既製服でこなれ感を作り上げるという技なのだ。
「そもそもアメリカの服はアメリカ人に合うように作られている。既製服をただ着ている人はサマになっていないように思えるんです。洗いやサイズは無論、肌に合う色で別注するなど、日本人にハマるように提案するのが僕たちの仕事」
戸建ての重いウッド扉を開けると、ヨーロピアン家具や、レイヤードされたジャケット姿のトルソーが目に飛び込み、その奥には見るからにファッション玄人な店主が構える。
少々ハードルが高く感じてしまうかもしれないけど、臆することはない。実は津保さんもこう見えてかなりのシャイボーイゆえに口べたではあるが、バンダナの巻き方や、シャツ袖のブラウジング術に至るまでを丁寧に教えてくれる。“訪れた人を細部までカッコよくしたい”という思いはどこよりも誠実だ。