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白武ときお、金城小百合らが大切にしている、人生の一行

心に大切にとどめている、人生を支える言葉が誰にでもあるはず。本を読んでいて出会った偉人たちの格言、映画や漫画の名セリフ、恩人にかけられた忘れられない一言……。BRUTUSが信頼するクリエイター、文化人が大切にしている一行の言葉を集めたら、今を生き抜くヒントが詰まった名言集が完成した。

text & edit: Yuriko Kobayashi

鈴木優香(山岳収集家)

やっぱり私は、自分がこれだ、
と思う石を拾わなければいけない。

『途上の旅』
若菜晃子著/アノニマ・スタジオ

自分の直感がいまいち信じられないことの多い私に、この言葉は深く刺さった。自分がいいと思うものが人に受け入れられなかったとしても、簡単にそれを手放してはいけない。きれいだな、と純粋な気持ちで拾い上げたその石はずっと大切に持っていた方がいい。そうやって集めてきたものこそが、これからの自分を作るのだから。

白武ときお(放送作家)

悪いことすんなって言ってんじゃないの、
ダサいことすんなって言ってんの。

テレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』
'00/TBS系

窪塚洋介が演じたギャング・タカシの台詞(せりふ)。好き勝手して輪を乱すメンバーに対して、ギャングとしての心意気、美学、トップに立つものの資質を見せつける。自分の中でダサいことの基準が明確にあり、その選択の積み重ねの上に人がついてくる。「強いだけじゃ誰もついてこない」と語る唯一無二のカリスマ性に惹かれます。

金城小百合(漫画編集者)

魔法の答えが空から降ってくるのを待ったりしない

『秘密と嘘と民主主義』
ノーム・チョムスキー著/田中美佳子訳/成甲書房

沖縄出身の両親を持ち、基地問題などから自国とアメリカへの不信と怒りを蓄積させていたが、それを周囲と共有できず、心が腐りかけていた時に出会った言葉。行動し、トライアンドエラーを繰り返し、是正に近づく。いきなり問題を解決する“魔法の言葉”なんてない。努力をせず、文句だけ言うのはダサいと気づかせてくれた。

服部文祥(サバイバル登山家、編集者)

山はハートで登るものなんや。

登山家・和田城志を取材した時に語られた言葉

山岳雑誌の編集者として初めてインタビューを担当した取材相手が登山家の和田城志だった。日本の厳冬期登山を熟知した和田氏に「“冬山登山の工夫”という企画です」と取材の趣旨を切り出した私に、「登山に工夫などない」と言って、それに続いた一言がこれだった。以来勝手に、和田を登山の師匠としている。

小菅くみ(刺繍作家)

おごらず、他人(ひと)と比べず、
面白がって、平気に生きればいい

『一切なりゆき 樹木希林のことば』
樹木希林著/文春新書

楽しむことを考えて生きているのに、どうしても疲れてしまう……。そんな時、この言葉に救われました。「面白がる」を念頭に置いて生活してみれば、苦手なことも失敗も、見える世界はすべてポジティブになる。平気に生きるとは簡単なことではないけれど、そうであるように穏やかな心で過ごしたいと考えさせられた言葉です。

小池アミイゴ(イラストレーター)

弱いから、好き。

『弱いから、好き。』
長沢節著/草思社文庫

個性的であろうとして自分をぶん回していた僕に友人が勧めてくれたのが、長沢節が主宰した美術学校〈セツ・モードセミナー〉。そこで孤独であること、弱き者である自覚が、人を愛することにつながるのだと学んだ。時は“不適切”が猛威を振るうバブル期。この言葉のおかげで僕は時代に殺されることなく生きてこられたはずだ。