文・竹田ダニエル
“流行”ではない、自由でマインドフルな選択肢
歴史的に見ても、アメリカ社会は飲酒をベースとした社交がビジネスに欠かせなかったり、ポップカルチャーや映画などでは、過度な飲酒やアルコール依存症が“クール”なものとしてシンボル的に描かれたりしてきた。そういったテーマが問題視されていた近年、特にコロナ禍のロックダウンを経てから、若者を中心にアルコールに対する意識が大きく変わった。
シラフではデートで会話が進まないとか、パーティーが楽しくないとか、そういう考え方自体が不健康であり、アルコールに“逃げ”なければ不安症や鬱と向き合える、と気づいた人も多い。よりマインドフルな生活を心がけ、酒を飲む・飲まないを選びながら、それぞれの生活を尊重する方向にシフトしたのだ。
アメリカの若者の間では、“ソバーキュリアス=シラフでいることを楽しむ”という考え方は、ライフスタイルのひとつの選択肢であり、一過性のトレンドではない。TikTokにおける「#sober」というハッシュタグは、もはや日常になった。
フィットネスやマインドフルネスのブームと同様に、心身の変化を楽しみながら、アルコール摂取量を意図的に減らす人もいる。その中で、バーやカクテルのあり方もまた多様化し、誰もがより自由かつポジティブに、それらとの付き合い方を選択できるようになったのだ。
“Sober”な若者たちのドリンクライフ
「今日は飲まない」がナチュラルに浸透中。街角からTikTokまで、近年アメリカで広がるソバーキュリアス・カルチャーを紹介。