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オアシスらを輩出したアラン・マッギーの伝記映画が完成。本人に話を聞く

イギリスの名門〈クリエイション・レコーズ〉。オーナーであるアラン・マッギーの伝記映画が完成。80年代に『NME』などの音楽誌で写真を発表し、アランとも旧知の仲であるカメラマンの久保憲司さんが、本人をつかまえ、映画について、そして現在の活動について話を聞いた。

text: Kenji Kubo / edit: Katsumi Watanabe

オアシスを輩出したレーベルの成功と、激しい挫折

1990年代にオアシスやプライマル・スクリームを輩出した、イギリスの名門〈クリエイション・レコーズ〉。オーナーであるアラン・マッギーは、どのようにして世界最高のインディレーベルを築いたのか。そんな半生記が『クリエイション・ストーリーズ 〜世界の音楽シーンを塗り替えた男〜』として映画化。

80年代に『NME』などの音楽誌で写真を発表し、アランとも旧知の仲であるカメラマンの久保憲司さんが、本人をつかまえ、映画について、そして現在の活動について話を聞いた。

「ケンジ、久しぶり。日本でオアシスのリアムとDJした時に会って以来か」。アラン・マッギーが不思議なのは、細かいところは覚えているのに、僕がジーザス&メリーチェインの初のポートレートを撮影した事実を忘れているところ。映画『クリエイション・ストーリーズ』に出てきてもいい話だと思うけどな。

「アーヴィン・ウェルシュ(『トレインスポッティング』の原作者)が、“どうしても映画にしたい”と言ってくれて。彼は天才だから、身を任せることにした。でもね、僕の役をユアン・マクレガーにしたいと言ってきて、それだけは阻止した。あいつはスコティッシュには見えない。どちらかといえばスウェーデン人ぽいだろ」

劇中のアランを演じたのは、映画『トレインスポッティング』でスパッドを演じたユエン・ブレムナー。アランはパンク、アシッドハウスの精神でバンドを育て、ビートルズのブライアン・エプスタインや、セックス・ピストルズのマルコム・マクラーレンを超えるマネージャーに上り詰める。

「もともと、僕の周りには音楽の才能のある人がいた。プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーなんか、彼が11歳の時から知っている。もう50年間も友達なんだぜ。でも、確かに5年間、口を利かなかった時期もあったよ。人間には、そんな時期も必要じゃないかな。

それからオアシスに関しては、成功するなんて夢にも思わなかった。なんとなくうまくいったんだ。よく僕が成功した理由を、“労働者階級の精神を、エスタブリッシュメントの世界に持ってきたから”と言われるけど、その先駆者はマルコムだ。彼も労働者階級出身。間接的に見習ったね」

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなど、アランがプロデュースし、支えたバンドにはサイケデリックとパンクのにおいがする。つまり、彼が好きだったもの、見込んだものが時代を作った。パンクス、インディ・キッズ、レイヴァーの夢が、この映画には詰め込まれていると言っていい。その半面、アラン自身がオーバードースで死にかける様子、レーベルがソニーミュージックに乗っ取られてしまう経緯なども描かれている。

現在のアランは、再びパーティのオーガナイズ、新レーベルの始動、さらに最近ではハッピー・マンデーズやオーシャン・カラー・シーン、キャストなどのマネージメントも兼任している。アラン主催のフェスティバルがあるとも噂されている。

「スケジュールは押さえているけど、どんなフェスにするのか、何も決めてない。いろいろあったけど、音楽はどんな時でも、僕を裏切らなかった。いつも僕のそばにいてくれた。今も変わりないんだ」

90年代に久保憲司が撮った映画に登場するレジェンド