象潟(きさかた)の岩牡蠣(いわがき)が知る人ぞ知るブランド牡蠣になったのは、実は鳥海山のブナ林のおかげなのである。理由はこうだ。鳥海山の雪解け水は何十年もの時を経て伏流水として日本海の海底から湧き出ている。
伏流水にはブナ林の腐葉土からの養分がたっぷり含まれ、それが海水と混じり汽水となったところの岩礁が絶好の岩牡蠣の生息地となるからなのだ。鳥海山の恵みで育った岩牡蠣は平たく大きい。
中でも象潟の海岸から200〜300m沖、10〜20mの深さのところに岩牡蠣にとって奇跡的に条件が揃った漁場があり、そこでは7〜8年ものの大きな岩牡蠣が、数は少ないが生息する。
「岩牡蠣は大きいほどクリーミーでまろやかな甘味もある。でも7〜8年ものは深いところに生息していて名人しか獲れないので、水揚げされる数は少なく、この店で食べてもらう分しかないんです」と土田水産社長の土田豊さん。特大8年ものは、わざわざ象潟まで行かないと食べられないのだ。