愛って、後から気づくもの
愛の映画と聞くと、愛が熱せられた状態を描いた作品も浮かびますが、私は「あれは愛だったな」と後から気づく作品が好きですね。そういう意味では、コメディって基本そうかもしれません。『茶の味』も、春野家の日常を描いているフリをして、息子は恋に夢中でおでこから電車を出していたり、じいちゃんはずっと変なポーズを研究していたり、なにやってんねんの連続。しかもそういったボケに対してツッコミ不在のまま進んでいくのがいい。笑いあり涙ありのコメディよりも当たり前に変なことが起き続けるのが好きですね。必要以上に絡むことなく好き勝手できるのは、ベースに愛があるからだと思いますし。
私の家も春野家ほどボケ数は多くないですが、おのおのが自由にやるスタイルでした。でもそれぞれ機嫌良くやっているから家の雰囲気が不穏だったことはないし、愛されているなあと思ったことはないけど、逆に疑ったこともない。他人には冷めた関係に映るかもしれませんが、その家なりの愛なんだと思います。
お笑いの現場もベースは愛かも。例えばテレビ収録でMCの人が自分のボケに笑ってくれた時、優しいなと思いつつ、その人の根底にあるお笑い愛を感じます。私自身もよく面白い知り合いをつなげることがありますが、そいつへの愛情というより、あくまでお笑いのため。仕事という緊張感のある関係を保つことが、お笑いへの愛であり、結局は相手への敬意と愛になっているのかなと思います。