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「愛って、後から気づくもの」。Aマッソ・加納愛子が選ぶ、愛の映画『茶の味』

愛の映画を語る時、その人が理想とする愛の形が見えてくる。Aマッソ・加納愛子さんに聞いた、愛と映画の話。

text: Tsukika Yoshikawa

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愛って、後から気づくもの

愛の映画と聞くと、愛が熱せられた状態を描いた作品も浮かびますが、私は「あれは愛だったな」と後から気づく作品が好きですね。そういう意味では、コメディって基本そうかもしれません。『茶の味』も、春野家の日常を描いているフリをして、息子は恋に夢中でおでこから電車を出していたり、じいちゃんはずっと変なポーズを研究していたり、なにやってんねんの連続。しかもそういったボケに対してツッコミ不在のまま進んでいくのがいい。笑いあり涙ありのコメディよりも当たり前に変なことが起き続けるのが好きですね。必要以上に絡むことなく好き勝手できるのは、ベースに愛があるからだと思いますし。

私の家も春野家ほどボケ数は多くないですが、おのおのが自由にやるスタイルでした。でもそれぞれ機嫌良くやっているから家の雰囲気が不穏だったことはないし、愛されているなあと思ったことはないけど、逆に疑ったこともない。他人には冷めた関係に映るかもしれませんが、その家なりの愛なんだと思います。

お笑いの現場もベースは愛かも。例えばテレビ収録でMCの人が自分のボケに笑ってくれた時、優しいなと思いつつ、その人の根底にあるお笑い愛を感じます。私自身もよく面白い知り合いをつなげることがありますが、そいつへの愛情というより、あくまでお笑いのため。仕事という緊張感のある関係を保つことが、お笑いへの愛であり、結局は相手への敬意と愛になっているのかなと思います。

失恋に後悔の念を抱く長男・一(はじめ)と、時折巨大化した自分の幻が見える一の妹、幸子。それぞれが小さな悩みを抱える春野家の日常を、美しい里山の自然を背景に描いた作品。草彅剛、土屋アンナ、庵野秀明といった豪華出演陣にも注目。

監督:石井克人/出演:坂野真弥、佐藤貴広、浅野忠信、三浦友和ほか。

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