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語る

私が好きな冒険の本と映像。漫画家・小指

夏が来た、冒険の季節がやってきた。五感を解き放つ大自然へ、たった一人で孤独と向き合う旅へ、世界の裏側にあるリアルを求めて……。人はなぜ、冒険に惹かれるのか。その答えを求めて、冒険好きの小指さんに、一番好きな冒険作品を教えてもらいました。観るだけで、読むだけで、心沸き立つ作品。この夏、あなたの常識を覆してくれる冒険作品がここに!

本記事は、BRUTUS「冒険者たち。」(2025年7月1日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

illustration: Ryo Ishibashi / text: Ryota Mukai / text&edit: Emi Fukushima

訪れた土地に根差す、サイケな不思議に触れる

土地が持つ力に引き寄せられて始まる、民俗学的な冒険に惹かれます。小説『豚の報い』は沖縄が舞台。物語はある女性が、突然現れた豚に驚き魂(マブイ)を落とすことから始まります。

『豚の報い』
『豚の報い』
ある夜、スナックに豚が現れた。驚いた女性は魂(マブイ)を失ってしまう。これを取り戻すべく、男女4人は真謝島へ向かうことに。沖縄のフォークロアを駆使した芥川賞受賞作。著:又吉栄喜/文春文庫/品切れ。

沖縄ではショッキングなことが起きた時に「マブイを落とす」と言うのだそう。これを取り戻すための旅を通して、この地の霊性や死生観、そして人間の再生までが見事に描かれます。

YouTubeチャンネル『クーロン黒沢』は題材選びと知的な着眼点が魅力。最近はプノンペンのスラム街で発見した「ドブねずみハンター」の仕事に密着するドキュメンタリーを何度も観ました。

『クーロン黒沢』
編集者、作家などとして活動するクーロン黒沢のYouTubeチャンネル。本動画は「ドブねずみハンターに密着【カンボジア追憶紀行】」の一幕。プノンペンで出会った特殊なハンターの仕事を追う。

ドブネズミは食用に需要があるのだそうです。現地に飛び込みいきなりハンターを探し当てるなど、クーロンさんの前では奇妙なことが起こるけれど、何事も否定しないところが素敵。その姿勢が、土地に根差した不思議を引き寄せる秘密なのかもしれません。

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