訪れた土地に根差す、サイケな不思議に触れる
土地が持つ力に引き寄せられて始まる、民俗学的な冒険に惹かれます。小説『豚の報い』は沖縄が舞台。物語はある女性が、突然現れた豚に驚き魂(マブイ)を落とすことから始まります。

ある夜、スナックに豚が現れた。驚いた女性は魂(マブイ)を失ってしまう。これを取り戻すべく、男女4人は真謝島へ向かうことに。沖縄のフォークロアを駆使した芥川賞受賞作。著:又吉栄喜/文春文庫/品切れ。
沖縄ではショッキングなことが起きた時に「マブイを落とす」と言うのだそう。これを取り戻すための旅を通して、この地の霊性や死生観、そして人間の再生までが見事に描かれます。
YouTubeチャンネル『クーロン黒沢』は題材選びと知的な着眼点が魅力。最近はプノンペンのスラム街で発見した「ドブねずみハンター」の仕事に密着するドキュメンタリーを何度も観ました。
編集者、作家などとして活動するクーロン黒沢のYouTubeチャンネル。本動画は「ドブねずみハンターに密着【カンボジア追憶紀行】」の一幕。プノンペンで出会った特殊なハンターの仕事を追う。
ドブネズミは食用に需要があるのだそうです。現地に飛び込みいきなりハンターを探し当てるなど、クーロンさんの前では奇妙なことが起こるけれど、何事も否定しないところが素敵。その姿勢が、土地に根差した不思議を引き寄せる秘密なのかもしれません。