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語る

私が好きな冒険の本と映像。『TRANSIT』総括編集長・林紗代香

夏が来た、冒険の季節がやってきた。五感を解き放つ大自然へ、たった一人で孤独と向き合う旅へ、世界の裏側にあるリアルを求めて……。人はなぜ、冒険に惹かれるのか。その答えを求めて、冒険好きの林紗代香さんに、一番好きな冒険作品を教えてもらいました。観るだけで、読むだけで、心沸き立つ作品。この夏、あなたの常識を覆してくれる冒険作品がここに!

illustration: Ryo Ishibashi / text: Saki Miyahara / text & edit: Emi Fukushima

誰かの日常に触れることで世界の広さを体感する

トラベルカルチャー誌を編集している私にとって、知らないものに出会う時は冒険していると感じる瞬間。映画『アース』も、そんな感覚を呼び起こしてくれました。普段見ることのできない野生動物の世界を知れ、同時に「私たちはなんて美しい星に暮らしているんだろう」と、平凡な毎日までもが尊く思えました。

映画『アース』
©BBC Worldwide 2007

ウォーカー・エヴァンスの写真集『HAVANA 1933』も、心を強く揺さぶられた一冊です。社会主義国家のキューバに抱いているイメージを覆すような1930年代の人々の姿。まるで映画のワンシーンのようでもあり、ファッション広告のようでもある。

『HAVANA 1933 』写真:ウォーカー・エヴァンス
『HAVANA 1933』
キューバの首都ハバナを収めた写真集。キューバ革命以前に撮影され、当時の街並みやおしゃれをして歩く人、働く人の姿など日常の風景を切り取る。写真:ウォーカー・エヴァンス/Thames & Hudson/品切れ。

なにげない風景の中に、時代や場所を超えたドラマが詰まっていて、この時代のキューバを歩いてみたかったと、何度もページをめくってしまいます。誰かにとっての日常は、私にとっては新鮮で冒険のようだ、どちらの作品もそう感じさせてくれます。