スタイリスト喜多尾祥之のおとな相談室
photo: Go Tanabe / styling: Yoshiyuki Kitao / hair: Kenichi Yaguchi / edit: Keiichiro Miyata / special thanks: AUX BACCHANALES GINZA、歌舞伎座、帝国湯 喜多
本記事は、BRUTUS「「GOOD STYLE for Mr. BRUTUS 冬のあたたかい服。2024-25 A/W」」(2024年9月17日発売)から特別公開中。詳しくはこちら。
Case1 「遊べるスーツってありますか?」
小畑多丘/彫刻家
かつて日本にも“遊べるスーツ”を着た人が銀座を闊歩(かっぽ)していた時代があったけど、自分もそろそろそんな格好をしてみたい。
Kitao’s Answer
スーツは王道の方が遊べる幅が広いから、今季ならパリのテーラー〈ハズバンズ〉から出た、直球のチャコールグレースーツがおすすめ。
普段のスニーカーと合わせるのも“崩し”の十八番だけど、ふらっと銀座へ出かけるなら、ヒールブーツやデニムシャツで知的な色男感を出すと、こなれたパリジャンっぽくて街に溶け込むよ。
Case2 「〈Levi's®〉の《501》は絶対王者だけど、ちょっと気分を変えたい」
田中 陸/俳優
装いをガラッと変化させる勇気はないから、ちょっとした違いで自分らしさを更新したい。定番のジーンズでも、できるかな。
Kitao’s Answer
もちろんできます。そもそも洋服って昔と比べると同じサイズでもややビッグになっているから、ジーンズも少し太い方がバランスがいい。そのあたりのことを〈ノア〉はわかっているね。
シルエットは極太でなく、ちょい太。和顔の田中さんなら〈スズサン〉のシャツやニットで“和のアメカジ”にするとジーンズがもっと馴染む。
Case3 「肩幅が広くて、体に合うサイズがない」
ニールス・エドストローム/写真家
身長は190㎝。広い肩幅に合わせてアウターを選ぶとかなりルーズに見えてしまいます。もう大人だし、どうにかなりませんか。
Kitao’s Answer
すべて〈コモリ〉が解決してくれるよ。ほとんどのアウターが肩の落ちる設計だから、体格の良い人もすんなり。ほかのビッグサイズと一線を画す上品な落ち感があるから、たとえレザージャケットでもルーズに見えない。
また同じジャケットを身長160㎝台の僕が着てもダボダボして見えない。すべての体形をカバーしてくれるんだ。
Case4 「お兄さん方が着ている〈ヨウジヤマモト〉に挑戦したい」
中村歌之助/歌舞伎俳優
お家ごとに心得があるから、私服もすべてが自由ってわけにはいかないけど、その枠の中でかぶいた装いをしたい。
Kitao’s Answer
かぶき者には、〈ヨウジヤマモト〉の服がよく似合う。どちらも、型破りで和の伝統がちりばめられた、相通じるものがあるから。共鳴し合う関係は当然、相性がいい。
若い歌之助さんなら、コートの上にレザージャケットを重ねる格好もありだよ。体も心も若いうちじゃないと、攻めたファッションを我がものにできないから。
Case5 「スエットみたいに楽で、いいニットを探しています」
今泉力哉/映画監督
冬はニットを着たいけど、普段はトレーナーやスエットばかりで。ワイルドにも不潔にも見えない、ラフできれいめなニットが欲しい。
Kitao’s Answer
着慣れたトレーナーのようなゆったりしたシルエットで、上品な落ち感のある〈ザ・ロウ〉のカシミヤニットはどうでしょう。上質な素材を贅沢に使っているけど、ヴィンテージ感もあるから着慣れて見える。
ベージュは“おじさん”の風貌にも馴染みがいいから、おしゃれすぎる心配もない。きっと、今泉さん好みだと思います。
Case6 「どんなユニフォームなら、ヨーロッパっぽいバリスタになりますか?」
峰村 命/バリスタ
食の先進国といわれるデンマークへよく出張に行くんですが、現地のバリスタの装いがなぜか素敵に見える。近づけませんか。
Kitao’s Answer
清潔感のあるシャツを着ると、一気にヨーロッパっぽくなりますよ。元・剣道部で健康的な峰村さんには、太陽を全面に浴びたようなエネルギーが宿る、神奈川・葉山発の〈サンシャイン+クラウド〉のシャツをおすすめしたい。
エプロン姿に襟高のシャツを合わせると、首が詰まって見えてしまうけど、その点もちょうどいい。
Case7 「冬の温度調節に適したアンダーウェアは?」
田中 陸/俳優
寒さ対策は当然だけど、暖房で火照った体をクールダウンしたい時もある。いつでも完璧な冬のアンダーウェアはありますか。
Kitao’s Answer
Tシャツ含めアンダーウェアが盤石なら寒さにめげることはありません。選ぶべきはメリノウールのもの。衣類内の湿度と温度の管理に長け、あたたまった部屋とキンキンに冷えた屋外を行き来する時も常に適温を保ってくれる。
また汗冷えしない点も完璧。ファッションで究極の自己満を得るにはまず自己防衛から。これが鉄則です。