北海道・旭川〜北見の旅。川、湖、海で4種のトラウトに出会う釣行

北海道は広い。限られた時間を最大限活用して、思う存分楽しむには、2つの空港間をレンタカーで移動するONE WAYトリップがおすすめだ。今回、おすすめするのは旭川空港〜女満別空港。〈wazao-ippon〉とプランし、4種類のトラウト(鱒)に出会った釣行の記録。

photo: Go Tanabe / traveller: wazao-ippon

北海道は魚好きにとってはたまらない。四季折々の魚介類を楽しむために多くの人が訪れる。川、湖、海と、さまざまなフィールドで、多種多様な魚種を狙えるとあって、多くのアングラーもまた、この大地に惹きつけられる。日本の伝統文化である和竿を後世に引き継ぐべく活動する〈wazao-ippon〉もまた、北海道に魅せられた人たちだ。埼玉県出身の加藤千晃と添野友洋は年間2カ月は北海道に滞在し、釣行するという。「僕たちはいつも帯広から道東を中心に活動していますが、今回は新しい釣りを開拓したくて、旭川空港〜女満別空港間の片道コースを考えてみました。」(加藤千晃さん)

【旅程】

Day1
9:30 旭川空港着&レンタカーピックアップ
10:30 〈花、太陽、雨〉アトリエ@美瑛で情報収集
11:30 旭川市内の〈天勇〉で食事、〈釣人〉にて買い物
12:30 旭川市内〜上川町〜糠平温泉郷へと釣りをしながら移動
19:00 糠平温泉〈中村屋〉にて夕食(宿泊)

Day2
5:00 起床
6:00 然別湖でミヤベイワナ釣り
10:00 釣りをしながら北見市を目指す
14:00 〈北の大地の水族館〉訪問
17:00 サロマ湖での夕陽撮影
18:00 〈サロマ湖 鶴雅リゾート〉宿泊。温泉に入って早寝(宿泊)

Day3
3:00 網走・能取湖口でサクラマス狙い
8:00 〈仁頃ハッカ公園〉で待ち合わせ
9:00 北見市内の支流でヤマメの稚魚を観察
10:00 北見市街で焼肉〈味覚園 栄町店〉へ
14:00 北見市街の釣具店で情報収集後、網走北浜で釣り
18:00 〈女満別農業構造改革センター ひまわり温泉〉へ
19:00 女満別空港へ。帰京

Day1 旭川で情報収集し、大雪山北回りで糠平温泉郷へ

まず旭川空港でレンタカーをピックアップ。取材チーム4人の荷物を詰め込んだらSUVのトランクはパンパン。最初に向かったのは、車で15分ほどの美瑛に〈ネペンテス〉が新しく構えたアトリエ『ネペンテス美瑛ブランチ』。ここを拠点にスタートした新しいプロジェクト〈花、太陽、雨〉について、美瑛ブランチの永岡要さんに話を聞きに行った。旭川空港から30分ほど走れば最高の釣り場がたくさんあることを教えてもらった。このアクセスの良さは、魅力的だ。

まずは旭川市内に戻って、腹ごしらえと釣りの準備。宿のチェックインまでに釣りを堪能したいので、まずはサク飯だ。ゲソ丼で有名な立ち食い蕎麦屋さん〈天勇〉に直行する。その後、北海道のコンビニ〈セイコーマート〉に寄ったら、釣具屋さんで熊鈴や熊撃退スプレーほか、必要な釣具を購入。渓流グッズの充実ぶりには、いつも惚れ惚れする。いざ、出発だ。

旭川市内の川にも釣り人がちらほら。美しい清流は街はずれにたくさん見かける。少し竿を出してみるも、気が急いてばかりで不発。先を急ごう。大雪山の北を抜けて、宿がある糠平温泉までのルートを釣行する。上川町の層雲峡を横目に、石狩川と並走する国道39号線を進む。途中、永岡さんに教えてもらったポイントで良型オショロコマを狙って数回糸を垂れる。不発。しかし魚の気配はプンプンする。ロケーションは抜群だ。

三国峠を糠平温泉郷に降りてくる国道273号線を走る頃には夕方に差し掛かっている。たくさんの鹿が道端で僕らを見つめている。かわいいけど、飛び出してこないように注意が必要だ。ようやく辿り着いた温泉旅館〈中村屋〉さんのホスピタリティに旅の疲れが吹き飛ぶ。混浴露天風呂からは美しい星。しかし、明日の準備に入らなければ。DIYで作られた、とても居心地が良い部屋でせっせと釣具の準備を始めたが、気付けば夜中3時過ぎ。空が明るくなってきた!慌てて仮眠をとる。

Day2 幻の魚と出会った後は、オホーツク海を目指す

朝5時出発。宿の受付カウンターに鍵を戻すと、おにぎりセットが人数分用意されている。泣ける。目指すは車で40分ほどの然別湖だ。ここはグレートフィッシング然別湖という事務局が釣り場を保全していて、5月末から1カ月ほどの間はここにしか生息しないミヤベイワナを釣ることができる。約1万5000年前に大雪山系の火山噴火で、川が堰き止められて現在の湖になったときに、陸封されたオショロコマが独自の進化を遂げたと言われる。2時間ちょっと手漕ぎボートでトローリングしながら4尾の美しい緑色の魚体を拝む。うっとり。

今日の予定を少し巻けたので、音更川の支流を探る。助手席でスマホを手に地形を探りながら先を急ぐ。ポイントを絞ったらウェーダーに着替え、現場の流れを見ながら竿を出す。すべて現場主義のトライアンドエラーで、自然と対峙するのが〈wazao-ippon〉のやり方。アタリを感じるがここも不発。

次。時間との戦いだ。途中、道路と並行して流れる無加川に良さそうなポイントを見つける。川に架かる橋の下から探る。まずはオショロコマがヒット!そして、徐々に川を遡上しながら竿を振っていく。次にレインボートラウト!素晴らしいポイントだ。ここではスタッフを含め全員が魚体を拝む。和竿のポテンシャルを確かめることもできた。

いよいよ、旅のハイライトの一つ、〈北の大地の水族館〉山内創館長のもとへ。僕たちはこの人のツイッターをフォローしていて、大ファンだ。魚の写真の撮り方が上手で何よりも魚を愛しすぎている人。生態系がよくわかる展示と解説。あまりに面白すぎて、明日のアポも取って先を急ぐ。

本日の宿〈サロマ湖 鶴雅リゾート〉へ車をすすめる。夕陽の時間に間に合うも、残念ながら雲多め。宿のご飯はバイキング+豪華海鮮の数々。それにしても日没のサロマ湖がとても美しい。温泉に浸かって、サウナに入ったら、釣りの準備をして就寝。今夜も2時に宿を抜け出し、3時頃のあかつきから海でサクラマス狙いだ。

Day3 北見の自然・文化・食を堪能し、帰路へ

宿から車を走らせたら、すぐに網走市内に。目的地は能取湖の湖口あたりの海。淡水が混じり合う汽水ポイントだ。今日は長めの竿を使ってスプーンを投げる。沖に向けて投げていたカメラマンにヒット。魚体を拝むも、バラし。

さて、水族館館長の山内さんがリバースノーケリングに行くということで、仁頃はっか公園で待ち合わせ。ここは世界シェア7割を誇った北見ハッカの文化を今に伝える場所。ここに来たら北見原産の「北見ハッカ 取り卸し油」を買える。

リバースノーケリングは車で禁漁時期のヤマメの稚魚が泳ぐ某河川の支流へ。山内さんと一緒だからこそ入れる場所。熊に気をつけながらフィールドを進む。釣るだけじゃなく、生態を知ることがいかに大切かを思い知る。

山内さんに別れを告げ、北見の食を探る。厳寒期に外で焼肉祭りを行ったり、公園に焼肉用のスペースがあったりと、気になる食文化が存在する街なのだ。その焼肉を堪能すべく、〈味覚園 栄町店〉に立ち寄りランチ。まずはサガリと豚ホルモン。そしてジンギスカンも。たっぷりスタミナをつけていざサクラマスのリベンジ釣りへ!北見市内の釣具店で話しかけた地元のラングラーが、ポイントやルアーについて詳しく教えてくれる。なんと親切な!

女満別空港からのフライトギリギリまで釣りをすべく、網走の北浜へ。今度はサーフから投げ釣りでサクラマスを狙う。結果、海ヒメマスとカレイを釣り上げ終了。これで今回の釣行はコンプリート。川、湖、海で4種のトラウト(鱒)を釣り、上げる、贅沢な釣行となった。

北浜から車で25分。〈女満別農業構造改善センター ひまわり温泉〉にて疲れを癒やす。ぬるっとした泉質で、とても良い風呂。芯から温まり、いざ空港へ。なんとわずか5分で到着。ゴールデンコースを発見してしまった。「今回、2泊3日の旅程で川、湖、海を巡り、(ヤマメの稚魚の観察を含めると)5種のトラウトに出会えたのは結果の話です。でも、ある程度の狙いを定めてロマンを追いかける釣りが、また自分達の可能性を広げたような気がします。またこの地を訪れて、サクラマスのリベンジをしたいですね」(添野友洋)