北海道・函館~札幌の旅。熊彫りに魅了されて、熊まみれ旅

北海道は広い。限られた時間を最大限活用して、思う存分楽しむには、2つの空港間をレンタカーで移動するONE WAYトリップがおすすめだ。今回、おすすめするのは函館空港〜新千歳空港。木彫りの熊が好きで好きでたまらないなら、熊三昧のこんな旅もおすすめだ。

special thanks: Natsuki Ando

北海道の木彫り熊を収集&リサーチする「東京903会」主宰で、書籍『熊彫図鑑』などの出版も手がける編集者の安藤夏樹さん。これまで何度も通ってきた北海道の中でも王道といえる、聖地・八雲町を挟んだ函館空港〜新千歳空港までの2泊3日旅を、詳細に再現してもらった。圧倒的なリサーチ力にご注目!

旅程

Day1
8:30 函館空港着。レンタカーを借りる
9:00 函館国際ホテルで朝食
10:00 東浜桟橋にある熊の石碑を見学。
11:30  市電で函館駅へ。入場券を買い、駅構内の「幕末レリーフ」をチェック
13:00 〈cafe water〉でランチ
14:30 八雲町に移動し、〈八雲町木彫り熊資料館〉へ
16:00  喫茶〈ホーラク〉
17:00 〈銀婚湯〉に宿泊

Day2
11:00 八雲遊楽亭を見学
11:30 丘の駅で永井製菓「あつやきせんべい」と「木彫熊せんべい」を購入
12:00 〈まるみ食堂〉でランチ
13:30 現代作家の木彫り熊を扱う〈Kodamado〉で買い物
14:30 〈クレールいとう〉にて車中用におやつ購入
14:45 駅前のパチンコ屋横の熊石像を流し見
16:00 洞爺湖の〈熊乃屋阿野みやげ店〉へ
18:30 札幌着。〈gris〉で夕食
20:00 〈ザ・ロイヤルパーク キャンバス札幌大通公園〉 宿泊

Day3
10:00 〈円山動物園〉でリアル熊を観察
13:00 ラーメン店〈とくいち〉でランチ
16:00 〈遊木民〉〈札幌巴里画廊〉 でヴィンテージ木彫り熊をチェック
18:30 札幌駅着。あえてここでレンタカーを乗り捨て
19:00 札幌駅西コンコースにあるアイヌの熊彫名人、藤戸竹喜の作品などを見学
20:18 札幌駅から快速エアポートで新千歳空港へ
20:59 新千歳空港着

Day1 函館は話題のスポットを巡りつつ、木彫り熊の聖地へ

函館は美食の街で知られるが、サービス競争の果てか、地元の特徴を出そうとしたのか、実はホテルの朝食も豪華なことで知られる。そこで、空港でレンタカーを借りたらビジターもOKの〈函館国際ホテル〉で腹ごしらえ。いきなり海鮮の玉手箱のようだ。少し移動して東浜桟橋付近に駐車、根本勲による「北海道第一歩の地碑」(熊の巨大な石彫)を見学。主に作家物の木彫り熊を追いかけている私にとって、根本さんの抽象化された作品は垂涎もの。

東浜桟橋にある、根本勲による「北海道第一歩の地碑」
東浜桟橋付近にある「北海道第一歩の地碑」。木彫り熊の作家としても知られる根本勲の、巨大な石彫。

せっかくなので、近くの末広町電停から市電に乗ってJR函館駅に。路面電車は情緒があって最高。JR函館駅構内には、流政之作「幕末壁画」がある。“昨日の敵は明日の友”と、開港から幕末の箱館戦争までを描いた巨大レリーフは、一見の価値あり。また市電で十字街電停まで戻り、原川慎一郎さんの〈cafe water〉へ。原川さんもまた、函館の食材に魅了され、この地に店を作ったと聞いている。〈もりかげ商店〉のスイーツを購入し、いよいよ聖地・八雲町へ移動する。

まずは国内有一の木彫り熊専門資料館で、北海道の木彫熊の歴史を俯瞰することができる〈八雲町木彫り熊資料館〉でしょう。ここで絶対に見てもらいたいのが、伊藤政雄による第一号と、柴崎重行と根本勲による合作。合作はかつて東京六本木で開催された「野生展」にもゲスト出品された名品で、抽象化されたその姿はまさにすごいの一言です。運がよければ学芸員の大谷茂之さんの話を聞けることも。八雲の熊以外に、道内の他の地域で彫られた熊も見られる点も良い。

北海道〈八雲町木彫り熊資料館〉
八雲町木彫り熊資料館〉のシンボルともいえる茂木多喜治による木彫り。八雲以外の熊も多数収蔵。

たっぷりと楽しんだら、〈喫茶ホーラク〉でお茶。ここには地元のおじいちゃん、おばあちゃんが持ち込んだ木彫り熊が大集結することでも知られる。作家と近い関係にいた人も多いので、他ではまず見ることのできない希少な作品も実際に触れさせてもらうことができるのも地元ならではだ。

移動も多く、疲れたので早めに宿へ。町からは少し離れるが、八雲の熊彫りについて書かれた伝説的随筆『木霊の再生』の舞台になった、〈銀婚湯〉に投宿。明日に備えることにした。

Day2 作家ものを探すなら八雲町。テンション高めに熊天国を堪能

丘の駅からの風景
八雲の丘の駅からの風景。晴れていれば内浦湾越しに羊蹄山の姿も。

ゆっくりとした朝の始まりは、八雲遊楽亭のロビーで、熊彫キーホルダーなど引間二郎の作品見学から。その足で、丘の駅に行き、永井製菓「あつやきせんべい」と「木彫熊せんべい」を購入する。なんやかんやでお昼どき。〈まるみ食堂〉で「なんでも鑑定団」に出品された柴崎重行、茂木多喜治の木彫り熊を見ながらのランチとしよう。名物「二海カレー スペシャル」でお腹もいっぱいに。八雲町で買い物をしたかったら、現代作家の木彫り熊を扱う〈Kodamado〉へ。今回、私が狙うのは千代熊か増田熊だ。実は、八雲は現代作家系木彫り熊の発祥の地でありながら、これまで買える場所がなかった。昨日の〈喫茶ホーラク〉や〈Kodamado〉は昔からある店だが、作品を取り扱ってくれるようになったので、ファンにとってもありがたい。

〈クレールいとう〉で帰りの車中用にアニマルケーキを購入。駅前のパチンコ屋横の熊石像を流し見しつつ、次の目的地、洞爺湖の〈熊乃屋阿野みやげ店〉へ。ちょっと遠回りだが、ここは北海道の木彫民芸品ばかり数千点を揃える店。タイミングが合えば、2階のコレクションルームも見せてもらえます。ECはやっていないし、お土産にちょうどいいお手頃な熊も売っているのでオススメ。

いよいよ札幌へ。途中景色の良いところで休憩しつつ、登別温泉を横目に先を急ぐ。札幌に到着したら、予約していた〈GRIS〉で夕食。モダンで優しい味の料理をいただきながら、山岸憲史作のニポポと渡辺北斗の作品を拝む。食後は本日の宿、〈ザ・ロイヤルパーク キャンバス札幌大通公園〉へ。いわゆる都会のホテルだが、エレベーターホールなどにも木彫の熊などがいて嬉しい。

GRISの渡辺北斗作品
GRIS〉にある渡辺北斗の作品。渡辺は道東で農業の傍に木彫作品を制作する注目の作家。

Day3 リアル熊を観察し、ヴィンテージ熊やアイヌ熊の造形にため息する

札幌市円山動物園のエゾヒグマ
札幌市〈円山動物園〉のエゾヒグマ。ここの動物園では、ホッキョクグマも人気者だ。

ここまで木彫の熊を追い求めてきたが、やはりその表現力の凄さを知るには、改めて本物の熊を見たいと思ってしまう。早速、札幌市〈円山動物園〉へ。ここは本来の生息環境の再現が優れた動物園として知られる。エゾヒグマを間近で見ると、迫力に圧倒されるが、どこかかわいく思えてしまう。お昼は、せっかくなので近くの名店〈とくいち〉で淡麗系の美しいラーメンを。こちらの店も店内ディスプレイで熊を堪能できます。

そして、いよいよ札幌といえばの名店2軒へ。〈遊木民〉と〈札幌巴里画廊〉でヴィンテージ木彫り熊をチェック。さすがの品揃えに、しばし時間を忘れてしまう。

その後、札幌駅に向かい、今回の旅はあえてここでレンタカーを乗り捨てることに。札幌駅西コンコースにあるアイヌの熊彫名人、藤戸竹喜の「エカシ像」を拝見。せっかくなので駆け足で栗谷川健一「きたぐにの歌」や流政之「テルミヌス」などもチェックする。札幌駅から快速エアポートで新千歳空港へ向かいながら、濃密な旅を回想。新千歳空港で、サッポロクラシックの生ビールでも飲みながら、フライトを待つことに。

札幌駅にある流正之作の「さきもり」
札幌駅にある、流正之作の「テルミヌス」。