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真夏の新作ホラー3作品『哭悲/THE SADNESS』『X エックス』『女神の継承』どれ観る?

暑い夏は、スリルを味わって少しでも涼しくなりたいもの。今年の夏もホラー映画が大豊作。中でも注目の3作品を、ホラーに詳しい識者3名が観賞し、1〜10点で採点。本当に観るべきホラーはどれ?評価はいかに。

text: Emi Fukushima

『哭悲/THE SADNESS』

ある日、台湾で謎のウイルスが突然変異を起こし、凶暴性を助長する恐ろしい疫病が蔓延。地獄絵図と化した街である男女はなんとか再会を図るが———。監督・脚本:ロブ・ジャバズ。

10点:ゴア描写の大洪水!
文句なしの大傑作。

あっちを見たら残虐行為、こっちを見たら損壊死体という、全編がゴア映像の幕の内弁当状態!ホラーに刺激を求める人にはご褒美のような映画で、これは文句のつけようがありません!大勢の人がバリバリの下卑た笑顔で追いかけてくる映像は、しばらく夢に出てきそう。台湾ホラーのレベルの高さを世界に知らしめる大傑作だと思います。(人間食べ食べカエル)

8点:激辛やきそばを思わす
過激さは、夏の思い出に。

導入もそこそこ、突如始まるグロテスクな行為の数々。絶妙に痛いところを刺激する描写には、よく思いつくなと感動すら覚えました。食べ物で言うなら「ペヤング獄激辛やきそばFinal」。作り手は、どこまで辛いものを作れるか限界に挑戦したんじゃないかなとも。人によって好みが分かれる作品ですが、夏の思い出になると思います(笑)。(深津さくら)

9点:自分なら早く感染したい、
朗らか系ゾンビが活躍。

怖さはないですが、徹底的なグロ描写を終始楽しみました。感染すると、正常な精神を持ったまま、残忍な行為に及んでしまうウイルスが蔓延するという筋書きですが、印象的なのは、感染してゾンビ化した人たちの表情が朗らかで、エネルギーに満ち溢れていること。主人公は最後まで逃げ惑いますが、僕なら一刻も早く感染してしまいたいですね。(原昌和)

『X エックス』

1979年テキサス。自主映画の製作のため、3組のカップルがとある農場を訪れる。そこは、史上最高齢の殺人鬼夫婦が棲む屋敷だった。監督:タイ・ウエスト/出演:ミア・ゴスほか。

6点:高齢夫婦が繰り出す
不意打ち攻撃が見どころ。

人里離れた家を訪れた若者たちが襲われる展開は定番ですが、本作で襲ってくるのはなんと高齢夫婦!体の衰えを“不意打ち”でカバーする戦法に見応えがありますし、ゴア描写にもなかなか力が入っている。何より、お婆さんの色欲旺盛さが深く心に刻まれました。前半はテンポが悪く退屈ですが、それを補う後半の独特な展開にグッときます。(人間食べ食べカエル)

9点:喜怒哀楽が詰まった、
丁寧で“ノレる”ホラー。

『悪魔のいけにえ』『シャイニング』などの名ホラーを彷彿とさせるサービスシーンが楽しい一作です。一般的なホラーでは、相手が襲ってくる理由が説明されないことが多いですが、本作では襲う側の高齢夫婦の悲しみがきちんと描かれていて、少し共感してしまうところに独自性があるなと。喜怒哀楽のすべてが詰まっていますね。(深津さくら)

1点:全編通して共感し難いが、
若者の心優しさが救い。

いわば、若さに憧れる色欲メランコリック老婆物語。音で驚かせる演出が多いのも稚拙で、全く心に残りませんでした。劇中“どうせ、クソみたいなホラー映画だろ”というセリフが出てきますが、自分で言うなよ!と。唯一の救いは、冒頭ではかなり生意気そうな若者たちが実はみんな良いやつだったこと。やっぱり若者は社会の宝ですね。(原昌和)

『女神の継承』

タイ東北部の村の祈祷師一族の血を継ぐミンは、ある日原因不明の体調不良に見舞われ、凶暴な言動を繰り返すように。監督・脚本:バンジョン・ピサンタナクーン/原案・プロデュース:ナ・ホンジン。

8点:土着信仰ホラー好きには
刺さる、パワフルな一作。

本編はモキュメンタリー形式で描かれており、画面の向こう側に人影が映り込むなど、ゾクッとするシーンがいくつもあります。特にミンが取り憑かれてからは恐怖映像のオンパレード。怖くてパワフルな作品である一方、一部でリアリティを重視した作りから逸脱するような展開が見られたので、満点には至りませんでした。(人間食べ食べカエル)

9点:スマホ動画に収められた
些細な異常さに戦慄する。

じめっとしたアジアンホラー。描かれている祈祷師の風習からは、四国の村に伝わる犬神憑きも連想させられ、日本の宗教観とも通じるなと。共感しやすかったです。次第に異常になるミンの様子が、SNSのショート動画で切り取られたシーンは戦慄。些細だけど、彼女の日常が確実に何かに侵食されていることがわかり、引き込まれました。(深津さくら)

7点:ミンの母親にムカつくが
オチの衝撃は満点級。

とにかくミンの母親・ノイが愚か。娘が次第におかしくなっていく様子に過剰に焦るばかりで、助けてくれる祈祷師の妹への敬意もなし。観ていて本気でイライラしました。と、引き込まれた前半から一転、中盤はただのゾンビ映画に。『東京フレンドパーク』のゾンビ狂乱編を観ているようで残念。でもオチはめちゃくちゃ怖かった!(原昌和)