2011年に学生有志によって発足した『NOROSHI』は、お笑いサークルに所属する学生芸人のための大会だ。漫才、コント、ピンの3種目を揃えたチームでエントリーし、予選、敗者復活戦、準決勝を経て決勝戦へと駒を進める。2015年からはかつての『大学芸会団体戦』から、現在の『NOROSHI』に名を変えた。吉本興業が協賛するビッグイベントになり、決戦会場の舞台はルミネtheよしもと。例年チケットは即完し、多くのお笑いファンが押し寄せる。
コロナ禍を受け開催を休止していたが、今年は晴れて3年ぶりに開催。予選8日目の模様をレポートする。
採点は観客が行う
予選最終日。東京メトロ方南町駅の路地の先にある杉並区立方南会館には、大きな荷物を手にした学生芸人が続々と会場入りしていた。今年は全国から全168チームが参加しており、今日だけでA、B、Cのブロックごとに7チーム、計21チームが出場する。
準備中の楽屋には、小道具が溢れんばかりに置かれ、緊張した面持ちの学生たちが出たり入ったりを繰り返している。顔のペイントも、ビニールを巻きつけたほぼ半裸姿の衣装も、手作り感がすごい。
客層は学生が多めだが、お笑い好きとみられる30代以上もチラホラ。来場すると皆一同に、配布された投票用紙に目を落とし始めた。『NOROSHI』では観客投票を導入しており、得票率の高かった上位3チームが準決勝へと進出するのだ。ただ芸を観て「面白かったね」で終わらず、観る側も参加者になれるのが本大会の魅力といえる。
3チームに直撃
「どうして今、お笑いを?」
予選8日目に出場した、3チームの学生芸人たちに話を聞いた。
トップバッターの名古屋大学落語研究会「跋扈」。
部長でもあるアルデバランの山岸リンタさんは、「大学に入る前から真空ジェシカさんや令和ロマンさんみたいな大学お笑い出身の芸人が人気になって、大学に入ったらお笑いをやろうと思ってました。学生生活のなかで、何か実績が欲しくて」と話す。名古屋では東京や大阪に比べて大学主催のライブが少なく、地下イベントにエントリーすることも。
「ネタを披露する大きな舞台がないぶん、狭い環境でも伝わるような会話や大喜利が得意。学生主体の大喜利番組があったらなあと思います」
社会人になっても、お笑いは趣味として続けていきたいという。
続くは、大学お笑い界の人気サークル、早稲田大学お笑い工房LUDOの「チーム少女時代」。ナゾの格闘家のナルちゃんは多摩美術大学に通う学生芸人だ。
「専攻した学科がメディア芸術コースという学科で、音楽でも映像でもCGでも造形でも何をやってもよくて。自己表現の一貫としてお笑いに行き着いた感じです」
まだ1年生で将来のことはわからないけれど、プロになってみたい気持ちもあり、いつか『ゴッドタン』の「コンビ愛確かめ選手権」に出たいそうだ。
3番手は創価大学落語研究会「黄組」。
スリーメンの嶋田弘一さんと坊野秀幸さんは、卒業したらプロになると決めている。
嶋田さんは「うちのサークルは、団体で勝ちたいという気持ちが強い。とにかく勝ちにこだわって、チームプレイでネタを考えてきました」と話す。
当初ツッコミだったが、ギャグ漫才をしていた坊野さんと佐藤魁さんのコンビに加入し、自分もギャグ側に。今後プロの道に進むか、養成所に入るかフリーでやるかは未定。
その後も予選はBブロック、Cブロックと熱戦を繰り広げた。感染症対策に配慮し、結果は終演後にTwitterで発表。
気になる8日目の結果は……、3位は同志社大学喜劇研究会「GANTZ」、2位は明治大学お笑いサークル木曜会Z「チーム月旅行」、そして1位は創価大学落語研究会「黄組」!
団体戦を意識したことが功を奏したのか、「黄組」が見事トップに輝いた。『M-1グランプリ』や『キングオブコント』にも大会ごとの戦い方があるように、5年という歴史を重ねた『NOROSHI』も、その特徴を踏まえて戦う時代が来ているのかもしれない。
出る側も、観る側も、運営する側も、「自分たちが大会をつくっている」という精神に満ちた笑いの祭典。ぜひ会場に足を運んで、原石たちが発する熱気を体験してほしい。