text: Shoko Yoshida

「一週間に一冊だけの本を売る」というコンセプトで『BRUTUS』でもお馴染みの書店兼ギャラリー〈森岡書店〉が、〈ボッテガ・ヴェネタ〉と異色のコラボレーションを実施。詩集をテーマにした特別展「La Libreria curated by 森岡書店 ―菅原敏『珈琲夜船』展」を開催する。期間は2025年6月19日(木)〜29日(日)の10日間だ。

会場は〈ボッテガ・ヴェネタ〉銀座フラッグシップ5階。本イベントで主役となる詩集は、ラジオでの朗読や歌詞提供など、幅広い分野で詩を表現する詩人・菅原敏さんの第4作『珈琲夜船』。

「珈琲を片手に夜の旅に出る“小舟”のような詩集」を目指して作られた今作には、タンザニアやコロンビアなどの珈琲豆の産地を冠した詩を含む全31編を収録する。

挿絵に添えられるのは、フランスのナダール賞を受賞した写真家・かじおかみほによるモノクロ写真。ページを開くにつれて、まるで遠い記憶の断片を見ているような懐かしい感覚に包まれる。

さらに、この展示空間を満たすのは、詩集から着想を得た“香り”。

東西の香り文化や技術を背景に調香を行う調香師の沙里さんが、珈琲の葉や花、塩、石、貝殻などの天然素材から抽出した香りを楽しみながら、全身で詩の世界に入り込めるイベントとなっている。

一冊の本の世界を立体的に伝える〈森岡書店〉。そして、創業以来アートシーンと関わりを持ち、分野を超えた文化交流を育み続けている〈ボッテガ・ヴェネタ〉。双方のタッグで実現したこの展示では、日常的に詩を嗜む人はもちろん、そうでない人にも未知の鑑賞体験が待っているはずだ。