熟成チーズならではの魅力とは
相性が良い、とされるチーズとお酒。自然の恵みをもとに発酵によって味が作られ、また産地ごとの気候などの条件で個性を発揮する、という共通点がある。これらをうまく一緒に合わせれば、互いの魅力を引き立て合う楽しみが生まれる。
そんなアイデアを教えてくれたのは、日本酒、焼酎といった“國酒”にフォーカスし、ミクソロジースタイルのカクテルで表現する東京・日比谷のバー〈FOLKLORE〉佐藤由紀乃さん。まず「よつ葉 北海道十勝 熟成ゴーダ」の印象を聞くと……。
「熟成期間が12カ月以上と長いこともあり、コクがあってまろやかな味わいですね。濃厚なうまみがありながら、かといって食べ疲れするわけでもなく、味わいのバランスが良い。ワインはもちろんですが、日本酒やビールを合わせてみたくなりますね」
「よつ葉 北海道十勝 熟成ゴーダ」は、通常熟成期間が3~4カ月のゴーダチーズを12カ月以上熟成したもの。製造できる数量に限りがあるため、よつ葉乳業オンラインショップのみの限定販売品だ。長期間熟成によって、芳醇なうまみや香り、後味の余韻や濃厚さをアップさせながら、クセや苦味の少ないまろやかさを併せ持つ。佐藤さんも、そのおいしさを瞬時に感じ取ったようだ。
店では日頃から即興でゲストのリクエストに応えている佐藤さん。瞬発力や引き出しの多さを活かし、クリエイティブな発想でペアリングも。
「液体にとろみを持たせて、口中でお酒が滞留する時間を長くした上で、食感の違うものを合わせたりします。あるいは味覚を補ったり、トーンを合わせたり。このチーズのようにまろやかなうまみがあるタイプにはエッジの利いたお酒よりも、トーンが似たお酒を合わせたいですね」
日本酒とチーズの相乗効果を体験
提案の1つめは、日本酒とのペアリング。辛口のにごり酒が良い相性で、さらに香り高いユズのリキュールとユズの皮をプラスするのがポイントだ。
「にごり酒特有の白濁した色合いと、熟成ゴーダの淡黄色とで、色のトーンを合わせます。日本酒は華やかな淡麗系よりも、香りが控えめで厚みがある辛口タイプがおすすめです。米らしさが感じられ、口当たりも柔らかくうまみがあるところへ、ユズのリキュールやピールを加えることで清涼感をもたらし、リフレッシュできる。熟成ゴーダを引き立てながら、余韻を切ってあげることで、飲み飽きないし食べ飽きない」
続く2つめの提案は、日本酒相手でも熱燗との組み合わせ。
「このチーズらしいコク深い味わいに負けない、熟成感ある日本酒をお燗にすることで、チーズの口溶けがよくなります」。さらにジンジャーとカツオ節をプラス、というアレンジで、出汁を飲んでいるかのような一杯に。
「今日はショウガのリキュールを使いましたが、日本酒に細切りの針ショウガとひとつまみのカツオ節を加えてお燗、もしくはレンジで温めてもOK。そのままだと飲みにくいので、茶漉し等で漉して召し上がってください。このペアリングは、カツオ節のようなイノシン酸系と、熟成したゴーダチーズのまろやかなグルタミン酸系で“うまみ×うまみ”の掛け合わせが楽しめます」
チーズ×ハーブ×スパイスの掛け合わせ
もちろん「よつ葉 北海道十勝 熟成ゴーダ」は、ビールとの相性も格別。そのまま合わせても十分に楽しめるが、熟成ゴーダに大葉、ミント、ディルを。ここに、フルーティーな香りの白ビールにカルダモンを加えて、というのが3つめの提案だ。熟成ゴーダのうまみとコクにハーブの爽やかな香りが加わって、ついつい手が伸びるアレンジになっている。
「爽やかに飲んでいただくならこれ。熟成ゴーダにはハーバル感を与えて新鮮な味わいに。ヴァイツェンタイプのビールには、清涼感のある芳香とピリッとした辛み、ほろ苦さのあるカルダモンを砕いたパウダーを。スパイスで味わいをつないであげるイメージですね。大葉をメインに、ミントとディルも一緒に刻めばより華やかになります」
今回の3種類のペアリングはいずれも熟成ゴーダの味わいを活かしつつ、材料も調理もすべて家庭で気軽に楽しめるアイデアです、という佐藤さん。このチーズ単体で味わうのももちろんいいが、ちょっと贅沢な気分を味わいたいとき、その時々にフィットする一杯と合わせるペアリングも、ぜひ気軽に自宅で試してみたい。