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文学『六人の嘘つきな大学生』 浅倉秋成:やさしい気持ちになれる、心がふっと温かくなる珠玉の名作選Vol.19

私たちは日々、いろいろなやさしさ”をもらっている。心がふっと温かくなる、映画から小説、音楽、マンガ……珠玉の名作選。人と人の“つながり”には、誰かにやさしくなれるヒントがある。「やさしいとき40」の一覧はこちら  

Text: Emi Fukushima, Daisuke Watanuki, Saki Miyahara

殺伐とした「就活」の中にも
不器用な思いやりと
秘められた善意があった

文学『六人の嘘つきな大学生』 浅倉秋成

ミステリーといっても、数年前に流行した、露悪的でバッドエンドの“イヤミス”とは対極の温かな読後感をもたらすのが、人気企業の最終選考に挑む大学生たちを描いた本作。

優秀に見える学生たちの醜さが次々と暴かれる前半から一転、その数年後を描く後半では、一見傲慢に見えたそれぞれの行為の根底に互いへの思いやりがあったことが明らかに。

「就活」という特殊な状況を生き抜くために、相手を蹴落とすよりもやさしさが用いられたことに救いを感じると同時に、人の本質を見る大切さに気づかされる。そして、発売後即重版がかかるほどこの作品が支持されること自体、人々がやさしさを求めている証拠であろう。

当たり前だが、彼らは全員、完全な善人ではなかったかもしれない。
でも完全な悪人であるはずがなかったのだ。

『六人の嘘つきな大学生』より

談・佐々木敦