挑発的な世界観に紛れた
まるで毛布のような
束の間の安心と心地よさ
前置きをしたいのは、フィッシュマンズ自体は決してやさしいバンドではないということ。楽曲「影ドロボウ」では“はやくあきらめなよ”と突き放すように歌ったほど尖った彼らだからこそ、ミニアルバム『corduroy's mood』で見せる温かな世界観が際立つ。
特に好きなのがこの曲。歌いだしの“寒い夜はね”から始まり、この言葉が重ねられるたびに曲の持つ世界にぐっと引き込まれ、毛布をかけてもらったかのような安心感へ誘われる。珍しくジャズ調のサウンドも、楽器が無理なく鳴っていて心地よい。
誰しも良い面と悪い面を抱えるように、様々な表情を持つ彼らの中に垣間見える一縷のやさしさに親しみが湧く。
談・スカート澤部渡