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〈風とロック〉20周年記念展を前に、箭内道彦が岡山天音と自身の仕事を振り返る

広告領域にとどまらず、出版、ラジオ、福島でのロックフェスからバンドまで、全方位的に活動を広げるクリエイティブディレクターの箭内道彦さん。主宰する〈風とロック〉の20周年を機に、俳優の岡山天音さんとその仕事の一端を話した。

photo: Kazuho Maruo / styling: Haruki Okamura (Amane Okayama) / text&edit: Asuka Ochi

岡山天音と〈風とロック〉の接点は?

岡山天音

昨年、箭内さんの連載の対談で初めてお会いして以来ですね。

箭内道彦

すごく好きになっちゃって、また会いたいなと思っていたんです。その時の対談で『月刊 風とロック』をもらいに行っていたと聞いて驚いたんですけど、めちゃくちゃ嬉しくて。記念展を開催するにあたって懐古趣味ではなく、これからの若い人たちに何を届けられるのか、自分に可能性を与えてくれた一言になりました。今の感覚で捉えた時にどう見えているのか気になりますね。

岡山

手にしたのは、10代か20代前半だったと思います。定価0円の文字も目を引いたし、全世代的に見たことのある人たちが、見たことのない表情をしている写真が印象的で、あまり出会ったことのないコンテンツだなと思ったのが最初でした。フリーペーパーでこういう試みがあるということ自体が面白かったですね。

『月刊 風とロック』
『月刊 風とロック』。4月20日に112冊目を配布開始予定。

箭内

当時、フリーペーパーの前にラジオ番組をやっていて、メディアがあるといろんな人にちゃんと会えるんだということを知ったんです。その番組が一時的に終わってしまったのがショックで、だったら自分でメディアを作ればいいというところに辿り着いた。自分のお金を使って自分の好きな人だけを、写真も自分で撮って載せているから、偏ってはいるけど、好きでないものを扱う必要が全くなくて暴走できるんですよね。ほかでは見ることのできない表情を写すのも好きで、ある人に「女性を初恋の人のように、男性を同級生のように撮りますね」と言われたのは嬉しかったです。

岡山

僕が見て驚いたのは、2012年の「風とロックと長澤まさみとジャイアンツ」号でしたね。ノリはオフビートなイメージなのに、写っている人物たちのテンションとは裏腹に、ビジュアルが鮮烈に映った。これなに⁉こんなことしていいの⁉みたいな感じもしたし。

箭内

この時は宮崎キャンプ前の自主トレ期間だったので、みんな楽しく接してくれて。僕は阪神ファンなんですよ。なのに、ジャイアンツを特集しているというプレーにもワクワクしちゃって(笑)。ジャイアンツが少し弱い年だったから、強くないと阪神も倒し甲斐がないなと。

岡山

いまだに似た形のものって出ないですよね。自分もこういう心意気で、安定したところに定住せずにやっていきたいなと思っています。

岡山天音/シャツ30,800円、ブルゾン38,500円(共にNOMA t.d./LILYyoyogiuehara TEL:03-6407-0668)、パンツ15,400円(THRIFTY LOOK/LILYyoyogiuehara)、その他スタイリスト私物

好きな人、会いたい人と、誰とも同じでないことを

岡山

箭内さんのことはNHKのトーク番組『トップランナー』でも観ていました。すごい金髪だし、どういう質問を投げかけるかも、それまでのMCとは異質に感じていて。

箭内

あの時は毎回、ゲストの過去のインタビュー記事を全部読んで、誰にも聞かれたことのない質問をして、誰からも言われたことのない褒め方をしたいと思っていたので、ぐったりしていましたね(笑)

岡山

箭内さんのお仕事を見ていると、輪郭が流動的で、印象が都度変わる。どこまで行ったら行き止まりなんだろうという感覚がありますね。

箭内

『月刊 風とロック』が特徴的ではありますが、すべての仕事において、自分が会えて嬉しいとか、よそで見たことがないということだけで作っています。樹木希林さんと富士フイルムの『PHOTO IS』で出会って、その後『月刊〜』で内田裕也さんへの愛を深く話してもらったことが、『ゼクシィ』のCMにつながっていたり。ただ趣味でやっているようなことも、融合し続けている。〈風とロック〉は、自分自身が自由でいるための装置なんですよね。