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俳優・山田孝之が畑仕事に熱中するワケ

土に触れると、地球が持つ体温を感じる。普段の暮らしでは出会うことのない虫や動物が、循環する世界を作っていることに気づく。収穫した作物を食べる幸せだけでなく、自分で育てている実感が、未来と希望を生む。不確かな時代に確かな何かを求め、畑へ。

Photo: Satoshi Nagare / Text: Masae Wako

自給自足の知恵と技術を学ぶべく、
まずは“土作り”に奮闘中。

「十数年放置されていた農地を鍬で耕し、竹炭を土に混ぜて土壌を改良し、大量の雑草を畝に被せることで良質の菌を繁殖させ……という作業の繰り返しです」と俳優の山田孝之さんは言う。今春〈原点回帰〉というプロジェクトを立ち上げて仲間を募り、畑仕事に取り組み始めて4ヵ月。目標は、理想の島を探し、自給自足できる知識と技術を学ぶ拠点にすることだ。

「息子がピーマンを生で食べるのを見て気づいたんです。今のピーマンは子供でも平気なくらい“苦くない”んだ、と。昔の野菜はもっと青臭くて苦かったはず。本来の味を知りたいし残したいと、本気で思いました」

山田孝之
山梨県の農地を借り受け、仲間とともに土壌改良からスタート。ようやく畝が3本でき、少しだけ種を蒔いたところ。

無農薬無肥料の自然農法や、昔から農家で採取されてきた種=固定種の話を聞きに先達を訪ね、まずは土作りから踏み出した。「僕がやっていれば、素人でもできるって伝わりやすいから」と笑いつつ、「でも3ヵ月前より“生きるスキル”は身についています」ときっぱり。

「先日パクチーの芽が出たんです。2㎝ほどのちっちゃいのを間引いて口に入れたら、ちゃんとパクチーの味がする。地球と一対一で向き合えている実感がありました。何かのため、人のためじゃなく、ただ生きるために生きている。そう思える瞬間が、畑仕事の喜びですね」

山田孝之
山田孝之さんは農業を始めて4ヵ月。土に竹炭を混ぜる土作りをしながら、「安全な食べ物を作る術を学びたい。人任せより自分で始めた方が楽しいし確実でしょ?」。