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地クラブの工房、山形〈山田パター工房〉へ。世界が憧れるパターは東北の職人の手から生まれる

ゴルフの世界にも日本各地でもの作りに励むクラフツマンがいる。ものは「地クラブ」と呼ばれ、少数精鋭で大手には成し得ないこまやかな作業を誇り、海外からの呼び声も高い。ここではパターを得意とした指折りの工房〈山田パター工房〉を訪ねた。

photo: Satoshi Nagare / text: Masae Wako

2012年、オーストラリアのプロ選手ライン・ギブソンが、世界最少スコア55のギネス記録を達成した。その時に使っていたのが山形県で作られた日本製のパター《エンペラー》。瞬く間に注目され、当時のアメリカ合衆国大統領バラク・オバマもこれを所望した。

そんな“世界一”のパターを、当時も今も一人で作っているのが、〈山田パター工房〉の山田透さん。設計やプログラミングを手がけるエンジニアであり、鉄の塊からヘッドを削り出したり溶接を行ったりする職人でもある。もともとジャズが好きでLAに渡り、名匠T・P・ミルズのパターに出会ったのが、ゴルフ界への入口。「勝負のラスト1mの価値を左右する道具」に惹かれ、迷うことなく足を踏み入れた。

「小さい時から数字や幾何学が大好き。合理的で数学的な人間なんです」と自らを評する山田さんのパターは、もちろん科学的な解析に基づいて設計されている。その特徴は、「座りがよく、ポンと置いただけで真っすぐ安定すること。打感が軟らかく、球が想像通りに転がること。そして、ヘッドが重めで芯に当たりやすく、方向性を出しやすいこと」。

プレーヤーの利き目を考慮し、シャフトとソールの角度を1度2度のレベルで調整するなど、フィッティングにも力を入れている。現在は“世界一”を進化させた《エンペラー2》などのマシンメイドパターのほか、世界各国のプロに愛されている《サムライ》《ショーグン》など、ハンドメイドパターの製作も数多い。

「機械と手仕事に優劣はない。大切なのはいいものを作ることです。機械だからこそ緻密に正確に実行できる工程もあれば、手作業じゃないとできない加工もあるんです」

例えば《サムライ》のヘッドとネックは一体成型ではなく手作業で溶接する。使う人に合わせたベストな角度に調節するためだ。研磨機を使った仕上げにかける時間は、1本につき2時間以上。形状と表面の滑らかさをとことん追求する。

〈山田パター工房〉ハンドメイドパターを作る作業の様子
〈山田パター工房〉を代表するハンドメイドパター。炭素含有率の低い鉄を使い、球の当たりが硬すぎないように仕上げる。写真はネックとヘッドを手で溶接しているところ。ロフト角4度。《サムライ》88,000円。

「自分の中でOKを出せる美しさかどうか。360度どこから見てもきれいな丸みのある状態になるまでは絶対に手を抜きません。やっぱり見た目は大切ですから」

最後の1mを確実に打つための設計と、計算式では辿り着けない美しさ。その両方を模索し続けている。