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札幌、名古屋、大阪、福岡。焼肉のために、街に足を運ぶ価値がある地方都市の名店4軒

その店のためだけにでも街に足を運ぶ価値がある。焼肉の国ニッポンを形作る地方都市の名店たち。

photo: Ryoichi Kawajiri (Sapporo), Masaki Nagaya (Nagoya), Kunihiro Fukumori (Osaka), Hiromasa Otsuka (Fukuoka) / text: Hitomi Seki (Sapporo), Masaki Nagaya (Nagoya), Keiko Kodera (Osaka), Kenji Jinnouchi (Fukuoka)

すすきの〈ふらの和牛 よしうし〉

北海道和牛に開眼! 生産者直営店。

“ふらの”といえば、TVドラマのロケ地やラベンダー畑が全国的に有名だが、和牛は意外に知られていない。それもそのはずで、「ふらの和牛」を生産するのは、上富良野町にある谷口ファームただ一軒。

牛肉の旨味の決め手となる脂の質にこだわり、飼料には自家栽培のデントコーンなど、主に北海道産を配合する。その味は、口に入れた瞬間にとろける、なめらかな口溶けが特徴だ。札幌・すすきのにある〈ふらの和牛 よしうし〉は、同ファームの直営店。

品数も豊富で、目移りすること必至だが、薄切りのサーロインをサッとって、昆布とカツオの上品なだしつゆで食べる「だししゃぶ」は、外せないメニューの一つ。初めて訪れるなら、あらゆる部位を一度に味わえるコースで堪能したい。

国際センター〈焼にく わにく〉

兵庫・川岸牧場産の神戸ビーフが自慢。

ウナギや淡水魚、ジビエなどを扱う創業90年の老舗食材卸問屋が経営母体。店名の〈わにく〉は、「日本の食文化を世界に」をテーマに掲げ、和食と焼肉を融合させたことから名づけられた。

メインの食材として選んだのは、兵庫県の川岸牧場から直接仕入れる最高級の神戸ビーフ。それも、軟らかくて味に深みのある雌牛に限定しているほどのこだわりぶり。

コースでは神戸ビーフの稀少部位の焼肉をはじめ、厳格な規定をクリアして提供の認可を受けた「神戸ビーフ特選ユッケ」や名物の「わにくサーロインしゃぶしゃぶ」など、ここでしか味わえないメニューが揃う。しゃぶしゃぶでとっただしで炊き上げたご飯に炙ったヒレ肉をのせた〆の「土鍋ヒレご飯」も格別だ。

北新地〈さつま〉

大衆的な雰囲気も味なキタの老舗焼肉店。

「コテコテだけが大阪ちゃうで」とばかりに、皿に盛られた肉は端正そのもの。大衆的な店構えと同様に飾り気は一切ないが、白煙に包まれる店内で焼きたてを頬張れば、肉に対する思いの深さがよくわかる。

創業は1983年。2代目店主の江口忠広さんは「親父が店に立っていた頃から旨い肉こそシンプルに食べてもらいたいという気持ちは変わらない。に塩焼きとありますが、タレ好きの常連さんも多いです」。

日本屈指の繁華街・北新地とあって客層は幅広く、アフターで立ち寄るクラブのホステスも少なくない。人気の牛タンも判はやや小さめで、そのぶん、厚みを持たせるようにカットするのも、女性客が食べやすいようにという配慮があってこそだ。キタに来たら行かなきゃ損でっせ!

祇園〈大東園本店〉

「大衆のご馳走」を貫く福岡焼肉の総本山。

創業は50年前。「旨い肉を気軽に味わってほしい」と創業者が自転車で精肉店を回り、納得した肉だけを出していた焼肉店がルーツ。いまも伊万里牛(佐賀)や、素牛から育てる壱岐牛(長崎)など九州産を中心に扱い、試食して納得したものしか仕入れない“実食主義”を貫く。肉の部位の種類も40〜50種と豊富で、タンだけでもタン、タンシン、アゴタンと揃えるなど稀少な部位を味わえるのも魅力。また、客席とは別フロアに温度管理をした精肉仕込み専用の部屋を設け、最高の状態で肉を提供する努力も惜しまない。威風堂々とした店構えから高級店と思われがちだが、ロース(1320円)は40年前から値上げをしていないなど、あくまで「大衆のご馳走屋」という姿勢を大切にしている。