監修：山本宗伸（獣医師）
今日までの発見によれば、猫は約1万年前から人間との暮らしを続けてきた。砂漠暮らしをしていた野生のリビアヤマネコが、ネズミ退治の大役を担うべく農耕の始まったレバント地方にやってきて家畜化され、時を経て古代エジプトへ、海を渡って古代ローマに到達。そこからヨーロッパ各地に広がり、シルクロードを通ってアジアに運ばれていったのが紀元前後のことだった。
極東の日本には6世紀に、中国から仏教とともに伝来したと考えられている。16世紀の大航海時代にはついに新大陸アメリカへ、18世紀にはオーストラリア大陸にも猫が到達。それぞれの土地ならではの形態的特徴を備えた品種が次々に生まれていく。
「ジャパニーズボブテイルやマンクスなどがわかりやすいですが、限定的な環境で繁殖が繰り返されることで特徴が引き継がれます。また、ノルウェージャンフォレストキャットやシベリアのサイベリアンのように、寒い土地では毛が長く体の大きな猫が生まれ、反対に暑い地域では、例えばシンガプーラのように細身で短毛、かつ小型の品種が生まれるようになりました」（山本宗伸さん）
猫の品種は、登録団体により数が異なるもののおよそ60種。自然発生した土着猫に加え、突然変異種を繁殖により固定化したもの、交配による人為的発生によって生まれたものの3パターンがThe Cat Fanciers' Association, Inc.（CFA）やThe International Cat Association（TICA）などに登録され、年ごとにその数を増やし続けている。
体形
現在60ほどを数える猫の品種は6つの体形に分類されている。三角のくさび形の顔、丸顔、四角顔、胴や脚の長短などで見る6タイプ。
ロング＆サブスタンシャル
多くは長毛で、その下に骨太で筋肉質のがっしりと長めの胴体が隠されている。寒い土地出身の大柄の猫が多い。
ぬいぐるみを意味する名前の通り、淡い色合いの丸いフォルムにおっとり気質が特徴。バイカラー、カラーポイント、四肢の先が白いミテッドに分類される。●体重4～7kg。
フォーリン
スレンダーで筋肉質な体は程よく細く、程よく丸みのある中肉中背。温暖な地域に適応した品種に多いタイプ。
アビシニアンの突然変異で生まれた長毛の猫が新たな品種に。丸みのある頭に大きな耳、縁取りされたアーモンドアイ、キツネのような尾もチャーミング。●体重3～5kg。
オリエンタル
細身で長い胴はチューバーボディと呼ばれ、肩幅とお尻の幅がほぼ同じ。脚や尾も長く華奢だが筋肉質で重量感あり。
三角の小さな頭、細身のチューバーボディに長い脚と尾はシャム譲り。シャムに様々な品種の猫を掛け合わせて出現した模様やカラーは600種以上ある。●体重3～4kg。
コビー
丸顔で胴も脚も短く、尾もやや短めのずんぐり真ん丸体形。柔らかな被毛に丈夫な骨格と筋肉を包んだおっとりさん。
低～い鼻、丸い目と離れ耳、丈夫で短い脚はペルシャ譲り。ペルシャの優雅さ愛らしさはそのままに短毛になった品種で愛称は「パジャマ姿のペルシャ」。●体重3～5.5kg。
セミフォーリン
丸みを帯びたくさび形の頭部に、肉付きのよいずっしりボディ。中肉中背のフォーリンに比べるとボディも脚も短め。
巻き毛に覆われた別名「プードルキャット」。小さな頭に細い首、ぷくんと膨らんだお腹も仔猫のよう。英国デヴォン州で発見された突然変異の猫が祖先。●体重3～5kg。
セミコビー
ずんぐり体形のコビーに比べてボディや脚、尾が長く、顔はやや大きめ。足先は丸みを帯びていてコビーより小さい。
ペルシャのような品のある顔は大きめ。太い首に丸みのある胴、マンチカン由来の短い脚を備える。20世紀末に生まれた新しい品種で、ナポレオンとも。●体重3～5kg。
柄
リビアヤマネコを祖先に持ち発生当初はすべてキジトラだったイエネコ。主に9つの遺伝子によって様々な毛柄に身を包むようになった。
ベンガル
野生美あふれる柄が世界中で大人気。スポットまたはマーブルの被毛が美しい、アジアンレパードとイエネコの交配種。病理学研究のため交配された、イエネコと野生の猫の子がルーツ。●体重3.5～7kg。
トイガー
1980年代に誕生したトラそっくりな猫。ベンガルのブリーダーによって生まれたトラ模様の猫。オレンジと黒が連続する縞はまさにトラ。幅広く長い鼻や強い顎も野性的な魅力に一役買っている。●体重3.5～5kg。
ボンベイ
漆黒のサテンのごとき艶やかな存在感。短く黒い毛に覆われた筋肉質の体と明るいカッパーの瞳がクロヒョウのよう。濃褐色のバーミーズと黒いアメリカンショートヘアの掛け合わせから誕生。●体重3.5～5.5kg。
ターキッシュバン
絹の手触りにうっとり。中世から続く美の形。1950年代に英国人により発見された、トルコの山岳地帯に暮らす土着猫。まばゆいほどの白い長毛で頭部と尾はバンパターンと呼ばれる赤褐色で彩られる。●体重4～6kg。
毛
暮らす地域によって、毛の長短も密度も毛質も様々。無毛のようで産毛に覆われた猫がいる一方、ボリューム感ある巻き毛に包まれた猫も。
スフィンクス
短～い産毛に覆われた桃のような触り心地。一度見たら忘れられない、肌を露出したしわしわ猫。実は黒や茶や灰の柄や被毛を持つ猫も。突然変異した個体にデボンレックスなどを掛け合わせて誕生。●体重3～5kg。
コーニッシュレックス
撫でればうっとり、ベルベットの肌触り。英国コーンウォール州で誕生した仔猫のスリムな体と短く波打つ巻き毛に魅了された飼い主がブリーディング。オリエンタルに分類される新品種となった。●体重3～4kg。
ラパーマ
名前の通りの波打つ被毛が自慢。米・オレゴン州の農園で無毛の仔猫が誕生。数週間後に生えてきたのはふわふわくるくるのカーリーヘアだった⁉突然変異から生まれた品種。●体重2.5～5.5kg。
セルカークレックス
ヒゲまでカールしたぬいぐるみのような猫。「羊をかぶった猫」の異名通りのふかふか巻き毛がゴージャス。くせ毛の遺伝子を持つ猫をペルシャと掛け合わせて固定化。短毛、長毛タイプがいる。●体重3～6.5kg。
瞳
暗いところでもよく見え、動体視力にも優れた猫の目は色のバリエーションも豊富。仲間や人間に大好きと伝える時はゆっくりと瞬く。
コラット
ペリドットグリーンがシルバーの毛に映える。生まれた時は青、10ヵ月ほどを経て緑がかったオレンジに、さらに2～4歳で緑に、瞳の色が変化する。ハート形の頭部を持ちタイで長く愛されてきた品種。●体重3～4.5kg。
シャルトリュー
16世紀の書物に記録が残るフランス猫。ゴールド、オレンジ、カッパーの瞳を見開き、口元はにっこり。シックなブルーコートに包まれたもこっとした体はジャガイモに譬えられることもある。●体重4～6.5kg。
トンキニーズ
きらめくアクアの瞳とミンクのごとき被毛。タイに生息した由緒正しき猫から名をもらい、シャムのポイントカラーとバーミーズの滑らかな被毛を受け継いだ猫。丸みのある体は筋肉質で重量感あり。●体重3～5kg。
カオマニー
緑、青、黄色の瞳が純白の被毛に映える。タイ語で「白い宝石」を意味する純白の姿。楕円の目は時に左右の色が異なるオッドアイになる。王宮や寺院で愛された猫が渡米して広く知られることに。●体重2.7～5kg。
耳
品種により形は違えど、五感の中でも突出した聴覚で犬にも聴き取れない超音波にも反応。端につくヘンリーポケットの役割は未解明。
サバンナ
耳の後ろの眼状紋にも野生時代の名残が。南アフリカのサバンナに暮らすサーバルにシャムを交配した新品種。小さな頭、長い首、引き締まった体と運動能力が持ち味。大きな耳には眼状紋が。●体重4～8kg。
アメリカンカール
クルンと反った両耳は唯一無二の愛らしさ。軟骨の突然変異でふわふわ耳毛もよく見える！米・カリフォルニア州で発見され人気者に。長毛、短毛、共に柄が豊富。耳の折れる角度は90度以上。●体重3～5.5kg。
スコティッシュフォールド
ぺこりと畳まれた耳で丸～いフォルムが完成。耳が前に倒れていた突然変異の仔猫がルーツ。スコットランドの羊飼いが発見し、アメリカンショートヘアなどを交配して品種を確定した。ロングヘアも。●体重3～6kg。
鼻
においは人の5～10倍の嗅上皮でフェロモンはヤコブソン器官でキャッチ。鼻筋にも長短や個性が。小さな鼻でキスをくれることも。
ハバナ
トウモロコシのような飛び出しマズルが目印。立派な鼻梁と左右のぽこんとふくらんだマズル（鼻口部）。チョコレートまたは淡いグレーの毛が美しい。英国産はオリエンタル、米国産はセミフォーリン。●体重3～5kg。
ヒマラヤン
ペルシャ特有の鼻は幅と長さがほぼ同じ。短くつぶれた鼻と、ほぼ同じ高さに並んだサファイヤブルーの瞳。長毛で丸っこい体形はペルシャそのままに、シャムのポイントカラーで彩られた品種。●体重3～5.5kg。
尾
長くても短くても、尾の動きで愛情やイライラを、ぶわっと膨らませて恐怖や驚きを表すなど、猫の感情を最も表現するのがこのパーツ。
アメリカンボブテイル
野性味と愛らしさの絶妙なミックス感。茶の斑点と縞の毛に短くてふさふさの尾がかわいい、北米の野生猫ボブキャットによく似た一匹の猫から繁殖。長毛、短毛、共に骨太で鼻や顎もがっしり。●体重4～7kg。
マンクス
丸っこい体形ながら遊びも運動も大好き！19世紀初頭の絵画にも描かれた歴史ある品種。尾の椎骨（ついこつ）のない猫がイギリス・マン島内で繁殖。尾がないランピー、短尾のスタンピー、中尾のロンギーが。●体重3～6kg。
オシキャット
しなやかに伸びる尾は先端の黒色がポイント。体を覆うスポットと細長い尾。小さなくさび形の頭に大きな目と耳。南米を中心に生息するオセロットを思わせる美しさだが祖先はアビシニアンやシャム。●体重3～6.5kg。
足
長短、太さ、模様もいろいろ。わずかな凹凸や動きも感知し、体重の10倍の衝撃も吸収する肉球を備える。甘えたい時はふみふみもする。
マンチカン
短い脚をフル稼働して走り回る元気な猫。名前の由来は『オズの魔法使い』の物語。時折生まれる短い脚の猫を固定化したのが始まり。短い脚も厚みのある胴も筋肉質で活発に動く。ロングヘアも。●体重3～6kg。
スノーシュー
白靴下がよく似合うアメリカ生まれの品種。4本足に白い靴下を履いたようなミトンと、シャム由来のサファイヤブルーの瞳が自慢。シャムとアメリカンショートヘアを交配させて生まれた品種。●体重3.5～5kg。
