『あ、安部礼司』とは?
『NISSAN あ、安部礼司 ~ BEYOND THE AVERAGE ~』は、毎週日曜日夕方5時から5時55分まで、TOKYO FMをキーステーションにJFN38局ネットで放送中のコメディラジオドラマだ。
東京・神田神保町にある架空の中堅企業、大日本ジェネラルを舞台に、平均的な男性社員である主人公・安部礼司を中心とした社内外での物語が、1970〜90年代のポップスなどとともに繰り広げられる。
2006年4月にスタートし、2022年で17年目を迎えた長寿番組で、ラジオの他にも、これまでリアルやオンラインでのファンイベントや出張公開収録、テレビドラマ、漫画、脚本集、ポッドキャスト、Spotifyなど、さまざまなメディアへの展開、コラボレーションが実現している。
「開始当時から、ラジオドラマの型に収まらない自由な発想があった」
ラジオドラマという形式で『あ、安部礼司』が17年も続く番組へと成長した背景には、どのような理由があるのだろう。
番組を担当するTOKYO FMプロデューサーの大橋竜太さん、脚本担当の村上大樹さん、そして放送開始からこれまで一社提供のスポンサーとして番組を支えている日産自動車日本マーケティング本部ブランド&メディア戦略部シニアマネージャーの小倉遵也さんに、人気の裏側を聞いた。
最初に、番組が始まった経緯を教えてください。
村上大樹
当時、ラジオドラマをやったら面白いんじゃないかというプロデューサーの思いつきから、手探りで始まった感じですね。
特にそういったものが流行っていたわけでもなくて、最初の頃は誰が聞くんだろうとリスナーにも不思議がられましたが、気付くと多くの人が聞いてくれる番組に育っていた。
ラジオドラマのあるべき型を守って作ってきたというより、やったことがないけどやってみようと、そこには今に続く、面白ければ何でもアリという自由な発想がありました。
小倉遵也
日産自動車としては、30代の男性にとにかく広く聞いてもらいたいという思いがあったと聞いています。
創業時から我々のブランドの根底には「他がやらぬことをやる」という社訓がありますが、それがラジオドラマの型がないことや自由さと一致して、今に続いているのかなという感覚があります。
村上
『あ、安部礼司』ってこういうものだよね、ってラジオが好きな人たちに伝わるまでには、それなりに時間がかかったと思いますね。
日曜日の夕方5時から懐メロ的な、30〜40代にとっての青春の曲をかけるような番組はありませんでしたし、物語の中に日産と関係のない企業のトレンド情報をどんどん入れているのも、それが世の中を映しているんだったら面白いと言ってもらえた。
今になって思えば自由すぎるくらい、本当に伸び伸びとやらせてもらっていました。
大橋竜太
誰もやっていなかったから、あえてラジオドラマを選んだということや、試行錯誤を重ねて一から作っていたことが、結果、新しい形の番組につながったんだろうなと思います。
村上
地味でどこか楽しみにくいといったようなラジオドラマの既成概念を壊して、なるべく多くの人に聞いてもらえるように、ドラマと音楽の尺を調整するなど、当時からいろいろな挑戦をしています。
「架空の人物の結婚を本気で祝うほどの、リスナーの熱量が支えに」
17年続く長寿番組ですが、ターニングポイントとなった出来事やトピックはありますか?
村上
番組開始から3年目の2009年に、安部礼司と優ちゃんの結婚式を、渋谷C.C.Lemonホール(現・渋谷公会堂)でやったことですね。
それまでに、スペイン坂のスタジオに人物のシルエットだけを映して公開生放送をしたりはしていましたが、実態のない人の結婚式にリスナーが来てくれるのかなと心配していたら、チケットは即完だった。
会場で引き出物みたいなグッズを売ったり、日産からお花が届いたり、全国から集ったリスナーもスタッフも一丸となって、架空の人物の結婚を本気で祝いました。そのときは、ラジオの熱というのをめちゃくちゃ感じましたね。
当時、Mixiで感想をリアルタイムにつぶやくなど、ラジオを聞きながらSNSでつながるコミュニティの走りにもなりました。
小倉
おそらく単なるラジオ番組を飛び越えて、安部礼司がコンテンツ化した瞬間だったと思いますね。以来、続けてきたイベントの他にも、MixiやTwitter、ブログ、Spotify、ポッドキャストなど、あらゆるメディアで時代を先取りすることで、タッチポイントをどんどん広げていっている。
安部礼司が、人が集まって会話ができる、強力なプラットホームになっているのは大きいかなと思います。時代の変遷とともに、先駆けていろいろと取り組んできた結果としての17年なのかなと。
村上
イベントによって、ラジオの前で日曜の夕方にこれだけ多くの人が番組を聞いているんだなとわかったのは、リスナーにとっても驚きだったし、作り手にとってもモチベーションになりました。
夏休みに日産の車を借りて、全国を縦断しながら公開収録をしたこともありますが、行く先々にリスナーが来てくれるんですね。
聞いてくれている方の心の中に実際にいない人物がいて、その人に会いに行くということがフットワーク軽くできるのも、ラジオならではなのかなと思います。そして、それに17年間も付き合ってくれている日産もすごいというか(笑)。
小倉
数字がついてきているのが素晴らしいなと思いますね。そこに行けば、同じ安部礼司が好きな仲間と会えるという要素もあるんじゃないかなという気がします。
リスナー同士の絆が強まって、仲間やコミュニティができる。ファンマーケティングのあるべき姿に成長し続けているのかなと捉えています。
村上
聞いている人たちがいい人すぎて、年度末になると、来年も続くんですか、突然終了しそうな気がするけれど大丈夫ですか……ってメッセージが届くんです。番組が終わらないように、日産の車を買いました、とか(笑)。
「他のラジオドラマとは圧倒的に違うグルーヴ感がある」
安部礼司というキャラクターの強さはどこにあると思いますか。
小倉
まず言えるのは、多くの人が共感できる、いわゆる平均的なサラリーマンだということですね。
大橋
そうですね。それと僕は、安部礼司の優しさって、強さなんじゃないかなと思います。ずる賢いことは絶対にしないし、この時代に最も世の中に求められている人というか。
村上
何をしても許されるところというのもありますね。たぶん安部礼司というキャラクターの発言は、ドラマのほんの一要素にすぎなくて、安部礼司を聞きながら、みんな自分のことを考えている気がするんです。
だから、それを邪魔しないように、聞いている人の鏡になれるように、ということだけは心がけていますが。そこには、1週間を終えた日曜の夕方にラジオを通して思いもよらない曲に出合ったりという、音楽の強さもあると思うんですよね。
大橋
そう、他のラジオドラマと明らかに違うのは、やっぱり音楽なんです。かける曲もそうなんですけど、BGMの当て方やテンポ感へのこだわりがすごい。
これは、スタッフ最年長で総合演出の勝島康一さんがずっと取り組んでくださっていますが、他のラジオドラマとは圧倒的にグルーヴ感が違います。
村上
勝島さんが番組の最重要人物であることは間違いありません。コンマ1秒のタイミングで番組が変わるというのが、本当によくわかる。
自分が脚本として書いたとは思えない情感が、音によって広がったりするんですよね。勝島さんがラジオでずっと闘ってきたからこそ出せる味だと思います。
小倉
音は本当にすごいと思います。自動車会社の人間なので、つい車が出てくると気になってしまうんですが、電気自動車に乗る回の耳触りや質感も、ものすごくリアルで驚きました。
静粛性を表現しつつ、モーターの音や外のノイズを適度に入れていたりする芸の細かさは、職人だなと。お二人の話を聞いていて合点がいきました。
「安部礼司には、時代の空気感が反映されている」
印象的な放送回はありますか?
大橋
最近では、安部礼司が出ない回ですかね。主役がいなくても成り立ってしまうというのも、17年の歴史なんだろうなと。
脇役にも、主役と同じように振る舞えるような個性が出来上がっているからこそだなと思います。
村上
その時々で、時代感を表す個性的なキャラクターも出てきたりするので、安部礼司がいなくても成り立ってしまうんですよね。主役が出ていないことに、気づかなかったりする人もいるんじゃないかなと。
最近では、何かと重くてネガティブなことばかり言っている女性社員で、重山つらみというキャラクターがいるんですけど、今だから出ていて共感できる人物像なんですよね。
そういうふうに時代が反映しているので、17年書き続けてきたものを後から読み返すと、そのときの空気感が強烈に蘇る。ギリギリに書いてすぐに録って出すことで、それがありありと映し出されるのが面白いなと思いますね。
リスナーからの反響で印象に残っていることはありますか?
村上
17年前は小学生で、日曜日に家族で出かけた帰りに安部礼司を聞いていたのが、今は社会人になって、安部さんの言っていたことがわかりましたなんて言ってもらうと、長く聞いてもらっているんだなと実感します。
他にも、会社で安部礼司を聞いていることで意気投合して、一緒にイベントに行って付き合うことになったとか、初デートのときに、会話が気まずくて車でいつも安部礼司を聞いてドライブデートしていました、とか。
いろんな人の生活の一場面に安部礼司というのがあるんだなというのは、感慨深いことです。リスナー同士で結婚されたというエピソードもたくさん聞きますね。
大橋
安部礼司婚は、めちゃくちゃあります!
小倉
そういうストーリーを聞くとほっこりしますね。車で安部礼司を聞いている何気ないシーンが、さまざまな人にとって大切な思い出として残るだけでも、価値のある番組なんだなと感じます。
新規リスナーこそ、安部礼司を聞くべき3つの理由
多くの人々から愛され続ける安部礼司。長寿番組だが、新規リスナーも聞きはじめやすい様々な魅力がある。
1.安部礼司は、誰でも共感できるのがすごい
名前も「アベレージ」と掛かっているように、容姿も力量も人並みで、極めて平均的。2006年に30歳だった主人公・安部礼司は51歳になった今も、がんばりは適度に、後輩からも慕われ、家では4人家族のいいお父さん。誰でも共感できるリアルなストーリー、等身大の人物像が多くの人に愛される理由なのかもしれない。
1話完結のストーリーのため、いつから聞いても置いてけぼり知らずなので、今からでも!
2.安部礼司は、音楽もすごい
物語を盛り上げる、番組内の効果音やBGMも秀逸。懐メロ改め、今さらツボな曲“今ツボ”を収録したコンピCDなども発売。Spotifyでは、番組でオンエアされた楽曲を中心とした、安部礼司のプレイリストを毎週オンエア後に配信している。
3.安部礼司は、イベントもすごい
リスナーの心をがっちり掴んでいるのが、定期的に行われているイベント。2014年、横浜の日産グローバル本社ギャラリーで開催されたリスナー大感謝祭『あべキュン♥』では、全国からのべ2万9924人のリスナーが来場。
日産グローバル本社ギャラリーの1日ののべ人数、最多来場者数を更新する賑わいに。新規リスナーもラジオを超えてつながろう!
1月8日、オンラインイベントが開催
2023年1月8日、オンラインでつながる、年に1度の安部礼司リスナーの祭典!『NISSAN あ、安部礼司オンラインフェスティバル ABE Tube 2023 ~未来のサラリーマン~』が開催。
3回目となるオンラインイベントは、「未来のサラリーマン」がテーマ。スペシャルゲスト田島貴男さんと生ラジオドラマのコラボも予定。イベントにZoomで参加するリスナーも募集中で、更にはスペシャルなプレゼントまで。参加は無料、新時代の生き方を安部礼司とアップデートしよう!