教えてくれた人:蓮村元(〈ジェイズ・バー〉店主)
2種の熟成樽と
アイラ島のピートを知る
蒸留所、熟成年数、ヴィンテージウイスキーというのも聞くし、樽の種類、グラス、飲み方、原材料、使っている蒸留器……と、どれだけ分け行っても深〜いウイスキーの世界。それゆえに惹かれるのだけど、ハードルの高さは否めない。
「確かに一口にウイスキーと言っても情報が多いですよね。でも、考えすぎですよ。楽しむためのポイントは自分の嗜好を知ること。その下地を作るために、まず最初のステップとしてウイスキー特有の味を感じることが大切です」と蓮村元さん。
そう言って出してくれたのが「グレンドロナック 12年」「アードベッグ 10年」「ザ・グレンリベット 12年」の3本。どれも酒屋で簡単に手に入るものばかりだ。
「かなり大雑把な話になりますが、ウイスキーの味の違いは熟成する樽に由来すると考えましょう。なかでもスコットランドで伝統的に使用されることが多いシェリー樽とバーボン樽の特徴が出ているものを試してみれば十分です。
シェリー樽熟成の『グレンドロナック 12年』には濃厚で甘い味わいを、バーボン樽熟成の『ザ・グレンリベット
12年』にはフレッシュな果実味を特に強く感じられるはずです」
たった2種類だけならかなりわかりやすい。それに自分のウイスキーの好みを説明するときには樽の好みを伝えれば嗜好を理解してもらいやすいというから、バーでオーダーに迷っても安心だ。
「もう一つ、ウイスキーをはじめるに当たって味わってほしいのが『アードベッグ 10年』。燻製のような独特な香りがするウイスキーなのですが、その秘密は樽ではなくピートにあるんです。
というのも、アードベッグ蒸留所があるスコットランドのアイラ島には、石炭の一種である泥炭(ピート)が大量に眠っています。これを燃料に、原料になる大麦を乾燥させることで特有の香りがあるウイスキーが生み出されているんです」
ピート由来で生まれるこの香りは“ピーティ”とも表現される。ほかのお酒では味わえないこの香りをきっかけにウイスキーにハマる人も多いという。
「とにかくまずは飲んでみましょう」とテイスティングも体験させてもらった。グラスにハーフショット(15ml)でOK。
アルコールを強く感じるなら、はじめは一滴でもいいとのこと。まずは香りを楽しむ。その感覚を忘れないうちに口に入れて、香りと味わいの違い、最初に感じる味と後味の違い、そして余韻を感じる時間の長さ、と3点を意識すればざっくりと印象がつかめるし、次に飲むウイスキーとの比較がしやすい。
「3つのうちで好きなものを見つけたら、ぜひ似たものを飲んでみてください。同じ樽でも、アイラ島でも、蒸留所が違えば味わいも変わる。その深さをどんどん発見できますよ」