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クリエイティブディレクター・渡邊謙治の睡眠空間学

最近ちゃんと眠れてますか?オンでもオフでも、ストレスなく充実した生活を送れている人は、たとえ多忙であっても「睡眠」を大切にしている——というのは、今や常識な様子。睡眠の達人たちの最上の寝室を求めて、クリエイティブディレクター・渡邊謙治さんの自宅に伺いました。

photo: Tetsuya Ito / text & edit: Chizuru Atsuta

リビングの中に造った半個室、スキップフロアの睡眠空間

寝室は必ずしも個室である必要はない。クリエイティブディレクターの渡邊謙治さんは、福岡市内で妻と2人暮らし。3DKだったマンションの間取りを取り壊し、大きな空間にリノベーションした。とにかく広々としたワンフロアにしたかったから、それ以外の部屋は設けず、リビングの一角に半個室のような寝室を造った。

いわく「壁を造って完全に独立した寝室も考えたのですが、仕切らない方が部屋が広く感じられて気持ちいいかなと。個室にしてしまうと寝る時にしか入らないこともありますし。ただ、リビングと寝室では生活の階層が少し違うようにも感じて、つながりながらも少し独立させるよう、3段ほど高さを設けたスキップフロアにしました」。

クリエイティブディレクター・渡邊謙治 自宅 ベッドルーム
スキップフロアになった少し高めのベッドルームからリビングを眺める。枕側は壁だが、正面には中庭があり自然光が差し込むので暗さはない。

夫妻ともども大のフランス好きで、音楽も映画も家具もいわば「フレンチかぶれ」。寝室を含めた空間のイメージは、コンパクトな中にすべて揃ったル・コルビュジエの〈ユニテ・ダビタシオン〉のような雰囲気にしたかったという。

寝室の奥の壁はリノベーションの時に造ったもので、元は引き違いの大きな窓があった。外側はいじれないので内側に壁を造り、わずかでも光を取り込むために小さな窓を付け、屋根裏部屋のような雰囲気のある空間に。小上がりになった下の空間はすべて収納。真ん中で区切り、庭の道具や工具など、屋外で使うものは外から開閉し取り出すことができ、布団やシーズンオフの衣類などは、家の中から引き出せるようになっている。

リビングに寝室があるということは、夫妻の生活リズムが合わないと難しそうだが、そのあたりは「好きなものも一緒だし、寝る時間もほぼ一緒。一人が音楽を聴いて、一人が本を読んでいるなどよくありますが、お互い気にならないんです」と妻も語るほど。

少し高い位置にあるベッドから、起きるとすぐに中庭の植物が目に入ることや、本棚一面にあるレコード、本、そしてポスターや家具など、お気に入りのものたちを眺められることが、この開けた寝室の醍醐味でもある。いつでも好きなものに囲まれていたい、2人の波長が合うからこそ実現した睡眠空間だ。

クリエイティブディレクター・渡邊謙治 自宅 リビングダイニング
約75m2の空間をワンフロアにして、リビング、ダイニング、寝室の機能を一つに。写真右奥がベッドルームに。ベッド上の照明はフランスのデザイナー、アラン・リシャール。