主演作は復讐の一日を繰り返す「カルト作」
恋人を殺された男は、何度でも報復できるプログラムを利用して、復讐の一日を繰り返す。異色のタイムループSF『ペナルティループ』を、主演する若葉竜也は「カルト作」と表現する。
「僕はこの映画を一種の喜劇と捉えているんです。悲しすぎて喜劇というか、地獄すぎて喜劇みたいな。観たあとの感覚は『鉄男』や『ピンク・フラミンゴ』に似ているかもしれません。“今何を観ていたんだろう?”って。脚本の段階から筆圧の強さを感じたし、これはカルト作という言葉が適切だと思うんですよね」
上手にできない瞬間にこそ本当の価値がある
『ペナルティループ』は若葉さんにとって2作目となる主演映画です。
若葉竜也
初めて主演した『街の上で』のあと、いくつか主演作のお話はいただいたんですね。でも客観的に見たときに、若葉竜也がやりそうな映画が多くて、そんなイメージを裏切りたかった。『ペナルティループ』なら、自分でも想像できないところへ連れていってもらえるような気がしたんです。
主演のときとそうでないときと、作品に臨む心構えは変わりますか?
若葉
実は主演って、ブレることができないからおいしくないんです。2番手や3番手の方が、主演を食うような演技が思い切りできる。でも基本的な心構えは変わりません。
メインでもワンシーンだけでも、同じレベルで緊張するし、同じレベルの精神状態を保ちたい。すべてデビュー作の気持ちで向き合いたいなと思います。役柄は一つ一つ違うから、積み重ねてきたもので戦わないことが大事ですよね。
若葉さんの演技には、作為の跡がいつも感じられません。
若葉
演技をするということから離れたいんです。一人の観客としても、演技の型みたいなものを見せられた途端に、その役者さんを信用できなくなる。「いや、うまいのはわかったから」って醒めちゃうんですよね。
別に明瞭なセリフを聞きたくて、映画を観ているわけじゃないので。それよりも言葉が震えていたり、セリフが出てこなかったり、上手にできなくなっている瞬間にこそ本当の価値があると思う。だから自分でも何が起こるかわからない状態で現場にいます。そのスタンスは十数年くらい前からずっと変わりません。
キャリアが浅い頃は、受け入れてもらえない現場もあったでしょうね。
若葉
めっちゃ怒られましたよ。才能ないってよく言われました。そんなに言われるなら本当にないんだろうなって(笑)。だからこそほかの人とは違う、自分の感覚で戦うしか、方法がもうなかったっていう感じですね。