2024年9月25日から10月1日まで、2025年春夏パリ・ウィメンズファッションウィーク期間中、パリ11区にあるオスマニアン建築の廃スペースで、ヴィンテージ服のポップアップイベントが開催されていた。
メルボルンの〈dot COMME〉をはじめ、世界各国から計11のヴィンテージショップやブランドが集まり、日本からは代々木上原の〈シノクロージング〉、渋谷の〈ブラケット〉、奥沢の〈エロティック〉、北越谷の〈パレ〉、ショップ〈イラス〉の5店が集結した。
名前すらないこのイベントの仕掛け人は、フランス出身のアーティスト、カリム・ハジャブさん。彼は自然の中に服を1年間放置したり、培養したバクテリアに服を食べさせてしまうといった、驚きの手法で服作りを行うブランド〈アプレ(APRÉS)〉や〈キャトルセゾン(4saison)〉を手掛けながら、パリにてヴィンテージショップ〈モラトリエ〉を経営している。
「ファッションウィークに合わせて、様々なタイプのショップを集めることで、型にはまることのない、異質なヴィンテージ・イベントを開催したかった」と言うカリムさんは、その理想に欠かせない出店者として、日本の〈シノクロージング〉らを指名した。「彼らのヴィンテージのキュレーションの仕方はとてもユニークで新しい。彼らは品質に対する鋭い目を持っていて、若い世代であり、好奇心にあふれています」。
日本と海外の古着文化の違いとは?
イベントに参加した〈シノクロージング〉の店主である木村謙太さんは、現在日本では人気のピークが過ぎたと言われているユーロヴィンテージを、アメリカンヴィンテージのように盛り上げ続けるにはどうしたらいいかと考えていたそうだ。
「日本に留まっているだけじゃ面白くない」と思っていた矢先に、カリムさんからの誘いを受けて、「海外の古着文化の勢いを肌で感じたい」と、今回思い切って出店を決めたという。
イベントは建物の3フロアを使って催され、日本の5店は個別のラックに分けられることなく、各店舗の服がすべて混在していた。ミリタリー、レザー、スポーツなど、ラックごとに緩やかなジャンル分けは行ったが、年代で分けるのではなく似たような色のアイテムなどがまとめられていた。これは、ヨーロッパで見られるカジュアルなディスプレイからヒントを得たという。
ユーロヴィンテージは世界的に見たらまだまだ人気のあるジャンルであり、その盛り上がりを裏付けるように、大きな告知をしなくても、イベントには目の肥えたデザイナーやバイヤーが続々と来場。
木村さんは、日本とヨーロッパのお客さんの反応の違いに驚いていた。「日本では、服の年代が分かるタグなど、主にディテールが重要視され価格が設定される。一方ヨーロッパでは、誰が何のために着たのか、アイテムのバックグラウンドやストーリーなど、その服の歴史に興味を持つ人が多い点も興味深いです」
リメイクのヴィンテージアイテムも人気だった。「リメイクは、ヴィンテージの見え方を変えてくれるものです。素直に良いものは良いと言ってくれる文化がここにはあって、こちらがストレートに伝えると、しっかりレスポンスが返ってくる」
出店をした日本の古着店のスタッフたち曰く、今回ヨーロッパで直接販売・接客をして学んだことは多く、そして、売り上げ面でも大きな手応えを感じたそうだ。「次のファッションウィークでも、このポップアップを続けていきたいですね」と木村さん。「情報だけではない古着の魅力を伝えることで、もっと古着文化を楽しくしていけたらと思います」
ちなみに、このイベントが開催されたスペースでは、今後もポップアップショップやアーティストの展覧会が開催される予定だ。パリに行った際にはぜひ足を運んでみてほしい。