諸橋隼人、下津優太ら映像制作者が告白する、本当に怖い映画

text & edit: Emi Fukushima

監督や脚本家、プロデューサーら映像作品の作り手4人が、本当に怖いと感じるホラー作品を告白。特に怖さを感じるポイントを、自らの言葉でしたためた。

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登場人物たちが垂れ流すさまざまな体液が怖い

『極道恐怖大劇場 牛頭』

監督:三池崇史/日/2003年
舞台は極道の世界。主人公の南は、兄貴分をヤクザ処理場へ連れていく道中、彼を殺害してしまう。以来不可解な出来事が起こる。

運転手の鼻血、女将の母乳、組長のアレ……だらしなく流れる体液を見ると、人が人でなくなってしまう恐怖と同時に「どうにでもなれ!」的な爽快感を覚えてしまう。湿度の高い恐怖とクィアな欲望に溢れたヤクザVシネの突然変異。哀川翔チワワぶん投げ事件から始まる地獄巡りをアナタもぜひ。

前触れも理由もなく襲ってくる謎の2人組が怖い

『ゴーストランドの惨劇』

監督:パスカル・ロジェ/仏=カナダ/2018年
母とともに人里離れた家で暮らすことになった双子の姉妹。新居に越してきた日の夜、2人組の暴漢が押し入る。

姉妹を襲う、謎の2人組による不条理な暴力。悲劇は前触れなく、理由なくやってくる。だから怖い。少しずつ見え隠れする暴漢の嗜好が、また怖い。恐怖に対峙する妹のある行為は「人はなぜホラー作品を作るのか/観るのか」という永遠の問いにある種の答えをくれます。逆境に立ち向かい、生に執着する人間讃歌です。

自分の感覚が拡張されるような気がして怖い

『ハウス・ジャック・ビルト』

監督:ラース・フォン・トリアー/デンマーク=仏=独=スウェーデン/2018年
建築家を夢見るジャックは、ある出来事を機に創作するように殺人を繰り返す。

強迫性障害で建築家志望の殺人鬼が、自分の美学に基づいた殺人を行い死体を組み合わせて家を造る。私は自分の感覚が拡張されることに恐怖と快楽を感じる。知ってはいけない、触れてはいけない感覚に接してしまった感じ。ラース・フォン・トリアー監督の作品を観るたびに、ただ自分は異常なフリの演出をしているだけだと思い知らされる。

中身がわからない器材ケースが怖い

『降霊』

監督:黒沢清/日/1999年
霊能力を持つ妻と音響技師の夫は、ある事件で誘拐を免れた少女が夫の器材ケースに隠れたことを機に、名を立てようと画策するが。

人が入れるほどのケースを開けるのが怖くなる。いつの間にか誰かが入り込んでしまっていたら……。知らぬ間に鍵を閉め、良からぬものを閉じ込めたまま、変わり果てた姿になっていたら恐ろしい。悲劇は予期しないところから勝手にやってきて、すべてを自分のせいにする、そうなったらどう足掻(あが)いても取り返しがつかないから。