金風呂タロウ、駒魔子ら漫画家が告白する、本当に怖い漫画
現実味のありすぎる場面設定が怖い
「丑の刻参り」
著:楳図かずお/1960年
『おみっちゃんが今夜もやってくる』収録/楳図かずおに届いた手紙を漫画化。亡くなった少女「おみつ」についての物語。
比奈子サンは呪われているから、最近、怖い体験ばかりする。だから学校の屋上でため息ついてフェンスに手をかける……すると突然フェンスが落下ッ!危ないッ!この場面は本当に怖い。今でも私はフェンスに寄りかかれません。現実味のありすぎる恐怖のシチュエーションは現実と漫画の境目がわからなくなるから罪ですね。
現実に侵食してくるほどの殺意の密度が怖い
『フロム・ヘル』
作:アラン・ムーア/画:エディ・キャンベル/1989年
女王の密命を機に、王室付きの医師ウィリアム・ガル博士は「大いなる業」を実現すべく動き始める。
ホラー表現において漫画が他の媒体に比べ優位な点は、読者にビジュアライズされた恐怖の対象を“所有”させることができることだと考えます。そのため作品に必要なのは本や画面から現実に侵食してくるほどの恐怖の“密度”です。この漫画は切り裂きジャック事件を通して殺人鬼のビジョンを圧倒的な密度で読者の前に顕現させます。
日常に突如現れる、理解不能な何かが怖い
『不安の種』
著:中山昌亮/2002〜05年
体育館の出入口の姿見に巨大な顔が映る(「しんがりの決まり」)など、2ページだけの作品なども収録するオムニバス作品。
歩いていただけ。もしくはドアを開けただけとか。最悪寝ていただけで、何かに遭う。何かは何かです。ただ生活しているだけでも死ぬ可能性はあるということは意識しないだけで、当然のことですね。不安の根源は多分そこにあって、人間は基本不安に耐えられないらしいです。その不安の種になるような漫画があったら、それはとても恐ろしいですよね。
常識が怖い
『気楽に殺ろうよ』
著:藤子・F・不二雄/1972年
会社員の河口は背中に激痛を覚え病院へ。そのさなかに次々と不可解な出来事に遭遇する(表題作)。全13作収録。
この短編集では、人を殺していい世界や想像が現実になる世界など非・常識な世界を読むことができる。F先生のポップなタッチで描く世界が妙に身近に感じられ、脳が非・常識と常識を行ったり来たりしてしまうのだ。そして本を閉じて常識に戻った瞬間、私は常識が怖くなってしまう。