大島依提亜、加賀美健らホラーファンが告白する、本当に怖いもの

text & edit: Yuriko Kobayashi

ホラーを愛しているのは、もちろん作り手だけではない。ファンとしてまだ見ぬ恐怖を追い求める4人が告白するバラエティに富んだ本当に怖いもの。

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押絵になってしまった人間の妄念が怖い

小説「押絵と旅する男」

著:江戸川乱歩/1929年
『江戸川乱歩全集 第5巻 押絵と旅する男』収録/夜行列車で出会った、押絵を携えた老人。奇妙で美しい物語を描く幻想小説。

若い美女と老いた男性があしらわれた押絵を携えて旅する老人。自分の兄が押絵の女に恋をして、絵の中に入ったと語る。人間が押絵になってしまうこと自体不気味であるが、年をとらない押絵の女に反して、元人間であった男の方ばかりは老いから逃れられないところに、人間の根源的な虚無を感じる。

初山滋が描く民話絵本のモダニズム的可愛らしさが怖い

絵本『うりこひめとあまんじゃく』

著:木下順二/絵:初山滋/1984年
ウリから生まれた美しい姫と、それになりすますイタズラ者のあまんじゃく。古くから伝わる日本の民話を基にした絵本。

初山滋がモダンに描くあまんじゃくは一見すると天真爛漫で可愛らしいのだが、何を考えているのか全然わからず、そればかりか自分のしている行動が自分でもわからなくなる。自らをコントロールできない者の奇行ほど恐ろしいものはない。しかし最も怖いのは、あまんじゃくの頭に生えた触角(のようなもの)の先端にある細いぐるぐる巻きの突起物。

不気味、悪趣味、陰惨……。その静謐すぎるサウンドが怖い

アルバム『20 Jazz Funk Greats』

イギリスのバンド、スロッビング・グリッスルの1979年のアルバム。それまでのノイジーな音像にとどまらず、テクノ的なエレクトロビートへと接近した傑作。

まずジャケットが怖い。自殺の名所で撮影され、草むらには死体が転がる(発売後に修正が加えられた)。呪文のような声、工場の破壊音、女の悲鳴、そこにかぶさる不気味にメロウなシンセサイザーの音像。世間的には悪趣味なオカルトバンドだと思われがちですが、そのサウンドは格段に美しく静謐(せいひつ)。ゆえに怖いんですよね。これを流せば部屋の湿度が下がることでしょう。

信じた人間が、とんでもない人物だったとわかるのが怖い

映画『オーディション』

監督:三池崇史/日/2000年
偽のオーディションで再婚相手を見つけた主人公。女と関わるうちに次々に起こる恐怖体験を描く。村上龍の同名小説を映画化。

妻に先立たれて以降、息子と2人で暮らしてきたビデオ制作会社の中年社長。映画のオーディションに来た女性の中から理想の再婚相手を探すのですが、選んだその女性が、とにかく……怖!序盤はラブストーリー的展開ですが、次第に自分が信じた人がとんでもない人物だとわかってくる。自分がもしこんな目に遭ったらと考えると恐ろしく、人間が一番怖いと思い知らされた作品。