齊藤ゾンビ、怖がらせ隊らホラー関係者が告白する、本当に怖いもの
被写体の心の暗部まで捉えた写真の強烈なコントラストが怖い
写真「お籠りする老婆 高山稲荷」
撮影:内藤正敏/1969年
自身も出羽三山で修行するなど東北地方の民間信仰や民俗の撮影に没頭した写真家の作品。題材となった高山稲荷神社は青森にある。
ストロボを焚(た)いて撮影した写真には独特の明暗がある。内藤正敏氏の写真はコントラストが強烈だ。闇の中で笑う老婆たちを見るとき、私はゾワゾワする恐怖を覚える。それは彼女たちの背後の深い闇に起因するものだ。その闇の中には必ず何かが潜んでいる。それは子供の頃に感じていた闇の怖さそのものだ。
弱いゾンビの集団に殺される人間。そのギャップが怖い
映画『ゾンビ』
監督:ジョージ・A・ロメロ/米=伊/1978年
惑星からの光線で地球上の死者がゾンビとして復活し、混沌とする世界。「ゾンビ映画」の金字塔とされる名作。
初めて観たホラー映画。ゾンビの動きが鈍いから簡単に逃げられるのに、集団で囲まれた時の逃げ場のない恐怖、生きたまま食われる残酷さ。そのギャップがさらに恐怖を掻(か)き立て、子供の頃の私にトラウマを与えては、夢の中でうなされた日々。だがそのトラウマはいつしか魅力へと変貌し、齊藤ゾンビを誕生させた。
霊のイメージを大きく裏切る得体の知れない真っ黒な存在が怖い
ドラマ『呪怨:呪いの家』
監督:三宅唱/日/2020年
呪いの家の存在を知って調査を始めた心霊研究家が、そこに暮らした母子をめぐる忌まわしい過去に辿り着く。全6話の連続ドラマ。
クライマックスのモノクロシーンが特に「怖い」。窓辺に立つ真っ黒な影が白い目をギョロつかせて覗き込む場面があり、今までに想像していた霊などのイメージからはかけ離れた得体の知れない怖さを感じた。想像や常識を超える理解できない「何か」を目撃した時に「怖い」という感情が芽生える。まさに、それを映像で体感させられた作品。
少し聴くだけで気を滅入らせる不快なメロディが怖い
巫秘抄歌(ゲーム『SIREN2』使用歌)
PlayStation 2/2006年
SCEI/日本近海の孤島を舞台にした3Dアクションホラーゲームの続編。「巫秘抄歌」はゲームを攻略するうえで重要な役割を果たす歌。
人が不快と感じる音のすべてが存在する曲。音が人間に与える影響は大きく、お化け屋敷を作るうえでも、どの音を使うかが恐怖体験の決め手に。また同じ映像を観ても、音が違うだけで恐怖が一気に増す。「巫秘抄歌」には恐怖心を抱かせる音がぎっしりで、これをカラオケで歌おうものなら、一日を憂鬱な気分にさせるほどの破壊力がある。