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グラフィックアーティスト・VERDYが選ぶ、いまセンスがいいもの

センスとは、一流に触れ続けることでしか得られないものなのではないか?ならば、一流の作り手たちは、いま何に惹きつけられているのだろうか。グラフィックアーティスト・VERDYさんのセレクトから見える2025年のセンスの答え。

illustration: Anri Yamada / text: Ku Ishikawa

自分の「好き」に忠実で、10年後も何十年後も色褪(あ)せないこと

2つのブランド〈Wasted Youth〉〈Girls Don't Cry〉を手がけ、グラフィックデザインの新たな地平を切り拓(ひら)くVERDYさん。「センスがいいっていうのは、作品やプロダクトを一目見ただけで、その人らしさが表れていること」

挙げてもらったリストには、名だたるクリエイターたちの名前が並ぶ。NIGO®、タイラー・ザ・クリエイター、トム・サックス、ココ・キャピタン、庄司夏子、オーラル・シュミット、そして〈POST ARCHIVE FACTION〉のデザイナー、ドンジュン・リム。だが、「その人らしさ」、すなわちオリジナリティを表現するのは容易じゃない。共通点はどこに?

「好きなことがしっかりしている。それに尽きると思います。もちろん、社会や流行を気にしていないわけではないと思います。でも、まずは自分の“好き”が最初にあるから、作るものがぶれない」

影響を受けたもの、変わらず好きなもの。それはVERDYさん自身のクリエイションの基盤でもある。高校時代に出会った1980年代アメリカのハードコアは、いまも彼の中で生き続けている。そして、彼が愛してやまないアーティスト、レイモンド・ペティボン。67歳の伝説的なアーティストは、ロックバンド〈ブラックフラッグ〉のアートワークで知られ、VERDYさんにとっては一生越えられない壁かもしれない。

「いまはお金があればなんでも買える時代。センスがいいものは簡単に手に入る。でも、センスを生み出す力はお金では買えない。それは長年の経験や、たまたまの出会い、そして運。だからこそ、そうしたスタンスを持つ人たちをリスペクトしています。僕よりも年下のココ・キャピタンやドンジュン・リムと話していてもそう感じますね。言語が違うからすごく深い話ができているわけではないけど、好きなものが似ていたり、重なっているから話が盛り上がるし、それを根っこにもの作りをしているという印象が強いです」

VERDYさんがブランドで心がけるのは、10年後に見ても「これを着てた自分って悪くないセンスだったな」と思わせる服。たとえいまは着なくとも、それを着ていた自分を肯定できるようなアイテムだ。

彼がリスペクトするクリエイターたちの作品も、VERDYさん自身のいまの感性が詰まっている。しかし、きっと後から振り返っても「やっぱり良かった」と感じるに違いなく、そう思わせるクリエイターの生きざまにこそセンスを見出している。