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園芸家・藤田智に聞く、ベランダで育てるのにおすすめの作物4選+α

土に触れ、作物を育てる。難しそう?そんなことはありません。自分で作った野菜は、いとおしくて、美味しい!園芸家・藤田智さんに、ベランダで育てるのにおすすめの作物を教えてもらいました。

初出:BRUTUS No.946「みんなの農業。」(2021年9月1日発売)

photo: Jun Nakagawa, Taro Hirano / illustration: Shinji Abe / text: Wakako Miyake, Hisashi Ikai

ベランダ菜園は、適切なプランターのサイズ、形を選ぶのがポイント。トマト、キュウリ、ナスといった丈が大きく育つものには、容量が25〜30L以上で、深さ30cm以上の大型プランターを。

一方、小松菜などの葉ものなら、横幅15cmで深さ20cm程度のサイズで十分。ベランダの方角によっては日当たりが限定的になるだけでなく、高さのあるマンションは風の影響にも気をつけたい。特に10階以上は風がかなり吹くので、背丈のある作物はしっかり支柱に固定しよう。

ミニトマト

植え付け:4月下旬〜5月中旬
収穫:6月下旬〜8月下旬

花が少しずつ咲き始めたら、筆先でやさしく人工授粉を

(1)苗を購入する時は開花しているかが決め手。房状になったつぼみの中で、1〜2輪くらい花が咲いているものを選ぶとよい。プランターは直径30×深さ30cmのものに1株ずつ植え付ける。

(2)プランターの中央に高さ1.8mの支柱を立て、枝を固定。茎の途中に出てくる脇芽はこまめに手で摘み取り、主枝1本をキープ。

(3)咲いた花が2〜3輪になったら、中心を筆の先でやさしく撫でて人工授粉。支柱の高さを越えるほどに枝が伸びたら、先端を切って草丈の生長を止める。

(4)水やりは毎日、プランターから水が流れる程度。肥料は2週間おきに化成肥料を10gずつ加える。

(5)花が咲いて35〜40日経った頃から実がなり始める。熟すスピードが速い。放っておくと傷んでしまったり、鳥についばまれたりするので、色づいたものから順番に収穫。

ミニトマト イラスト
害虫がつきやすいので、自然農薬のほか、園芸用のハエ取り紙も有効。支柱にぶら下げておくだけで、アブラムシをある程度駆除できる。収穫が早すぎたと思う時は、常温で1日置いておけば、追熟して美味しく食べられる。

バジル

種蒔き:5月上旬〜7月上旬
植え付け:5月中旬〜7月中旬
収穫:6月中旬〜9月下旬

花芽を早めにカットすれば、3ヵ月以上収穫可能

(1)種からも栽培可能だが、初心者は苗からがおすすめ。直径30×深さ30cm以上のプランターに、10cm以上の間隔を空けて3株を植え付ける。

(2)水やりは毎日たっぷりと。天気が良い夏の日は、朝晩の1日2回、水をあげてもいい。肥料は植え付けの2週間後から。2週間に1度のペースで化成肥料を10gずつ加える。

(3)高さが20cm以上に育ったら、茎の先端をハサミでカット、脇芽を生長させる。

(4)ハダニ、アブラムシなどの害虫が発生しやすいので、自然農薬《粘着くん液剤》を葉の裏に噴霧して対処を。

(5)収穫は、葉が柔らかいうちに一枚ずつ。脇芽を伸ばせば、繰り返し何度でも収穫することができる。いったん花が咲くと葉が硬くなり、生長も滞ってしまう。花芽はこまめに摘み取ることで、長期にわたる収穫を目指そう。

バジル イラスト
種からトライするなら、1ヵ所に7〜8粒蒔(ま)き、双葉が出たら3〜4本に間引き、本葉が出たらさらに大きいもの2本だけを残す。種を収穫すれば、そのまま食用のバジルシードとして使うこともできる。

ミニキュウリ

植え付け:4月下旬〜5月中旬
収穫:6月上旬〜8月中旬

三角錐形の支柱に沿わせるように巻きひげの生長を促す

(1)苗は、本葉が3〜4枚ついたしっかりとしたものを選び、直径30×深さ30cm程度のプランターに1株ずつ植え付ける。支柱は1.8mほど、3本の柱が頂点で交差する「三角錐形」にして、上部から紐でつるを固定すると、生長に合わせて巻きひげが自然に支柱に絡む。

(2)カビが原因のべと病やうどんこ病になりやすいので、《サンボルドー》《カリグリーン》などの自然成分使用の殺菌剤で対処。下の方の脇芽は摘み取り、6節目以上を育てるようにして、支柱の高さまで育ったら先端をカット。

(3)水やりは毎日、プランターから水が流れる程度。植え付けの2週間後に化成肥料を10g。その後2週間おきに10gずつ加える。

(4)実が10cm程度の大きさに育ったら収穫時期。最初の実は5〜6cm程度のうちに切り取っておくと、残りの果実が大きく育つ。

ミニキュウリ イラスト
くるりと曲がったり、先端が細くなったりした奇形の実ができたら、老化のサイン。水と肥料を加えて、もうひと頑張りさせたら収穫は終了。キュウリの果実はとにかく生長が速いので、こまめな収穫を心がけたい。

小松菜

種蒔き:3月中旬〜10月中旬
収穫:4月下旬〜12月下旬

積極的&こまめに間引いて、株を元気に、大きく育てる

(1)横幅65×奥行き20×深さ20cm程度のプランターに、列間10〜15cmで2列、1cm間隔で種を蒔(ま)く。

(2)双葉が開いたら3〜4cm間隔で間引く。また、弱々しい株や形の悪い株は見つけ次第、そのたびに除去しておく。小松菜は発芽率が高いので、この間引きを怠ると一株一株が大きく育たない。害虫がつきやすいので、種蒔き直後から防虫ネットで対策をし、無農薬で育てよう。

(3)土の表面が乾いたら、プランターから水が流れ出る程度に水やりを。ただし、水をやりすぎると根腐れの原因になるので注意したい。また、本葉が4枚揃ったら、化成肥料を株の周辺に10g程度追加する。

(4)草丈が20〜25cmほどに育ったら収穫時期。地表ぎりぎりのところをハサミで切り取ってもいいし、根ごと抜き取って土を洗い落としても構わない。

小松菜 イラスト
育てやすいが、生育が速いうえ、プランターに置いたままにすると品質が早くに劣化してしまうのが小松菜の難点。1週間〜10日ほど間隔を置いて種を蒔く「ずらし蒔き」をすると、長期にわたり収穫することができる。

薬味は買わずに育てて使う

料理の途中で、これが欲しい!と思った時にも、ハサミを持って窓を開けるだけ。すぐに収穫できるのが、ベランダ菜園のいいところ。そこで、あると嬉しいのが、薬味になる和製ハーブ類。少量を使うだけなので、買ってくるより便利で、なにより新鮮。収穫して冷凍しておけばいつでも使え、ふだんの料理をより深い味わいに仕上げてくれる。