「次はドキュメンタリーの特集を作るよ〜」と編集者に話を聞いた日の晩、自ずと気分が高まって、巨匠の名前と代表作を調べてみた。
名前だけは聞いたことがあるけど実は観たことがなかったワン・ビン、フレデリック・ワイズマン……と思いつくままに検索してみると、なんとU−NEXTでどの監督作も観られるではないか! すごい時代になったものだ。総タイトルは国内最大級で、「ドキュメンタリー映画の鬼才・原一男監督作」「『いただきます』の前に見たい、食のドキュメント」をはじめとっつきやすいテーマが立っているうえに、どれも、5〜10作程度にカテゴライズされているから手もつけやすい。
早速観始めて、まず気がついたのは、“ドキュメンタリーあるある”な長尺と、サブスクの相性がいいこと。劇場だと上映回数も減りタイミングも合わず泣く泣く諦める、なんてことも少なくないが、配信であれば、製作者には申し訳ないけれど、こちらの都合で思い切って途中休憩を挟むこともできるのだ。
ワン・ビンの『三姉妹〜雲南の子』は約150分、フレデリック・ワイズマンの『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』は130分ほどあるけれど、どちらも気負わず楽しめた。
いちライターとして新作関連の予習もしておこうと、この10月に公開されたパトリシオ・グスマンの3部作の最終作『夢のアンデス』の第1部『光のノスタルジア』を観賞(もちろん第2部『真珠のボタン』もあった!)。さらに11月27日に公開を控える『水俣曼荼羅』の原一男監督作を振り返ると、第1作の『さようならCP』をはじめ6作品が揃うラインナップ。
日本のドキュメンタリーを代表する想田和弘監督は『ザ・ビッグハウス』ほか7本も観られるし、ヴィム・ヴェンダース監督の『東京画』まで網羅している。
まさか、ここまで充実しているとは……!
ワン・ビン
『三姉妹〜雲南の子』
『鉄西区』で山形国際ドキュメンタリー映画祭の最高賞を受賞したワン・ビンが、中国雲南地方にある貧村で生活する幼い3姉妹の日常に密着。母親が家を出て、父親が出稼ぎするなか、母親代わりに食事の準備や家畜の世話をする10歳の長女の姿に胸を打たれる。https://video.unext.jp/title/SID0026378
フレデリック・ワイズマン
『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』
50年以上にわたりアメリカのドキュメンタリー映画界のトップランナーであり続ける巨匠フレデリック・ワイズマン。パリの老舗ナイトクラブ〈クレイジーホース〉の表と裏を余すことなく映した。製作過程から見られるラストのショー『DESIR』は圧巻。https://video.unext.jp/title/SID0033637
パトリシオ・グスマン
『光のノスタルジア』
1973年のクーデターを描いた3部作『チリの闘い』などで知られるパトリシオ・グスマンが、クーデター以降初めて故国チリで撮影した映画。アタカマ砂漠を舞台に、天体観測に適したこの地に集まる天文学者と、採掘労働者たちの亡骸を探す遺族が映される。https://video.unext.jp/title/SID0034231
原 一男
『さようならCP』
『ゆきゆきて、神軍』などで知られる日本ドキュメンタリー映画の巨匠、原一男が1972年に発表したデビュー作。CPとはCerebral Palsy(脳性麻痺)の頭文字を取った略称。障害者差別解消を目的に組織された〈青い芝の会〉のメンバーとその活動を取材した。https://video.unext.jp/title/SID0040562
想田和弘
『ザ・ビッグハウス』
ナレーションや音楽を使わない“観察映画”の監督、想田和弘による第8作。10万人以上を収容できる全米最大のアメリカンフットボール・スタジアムであるミシガン・スタジアムを総勢17人で撮影。食、宗教、人種、政治など、現代アメリカの要素が垣間見える。https://www.video.unext.jp/title/SID0047838
ヴィム・ヴェンダース
『東京画』
『パリ、テキサス』をはじめ、劇映画の監督としても知られるヴィム・ヴェンダースが、敬愛する小津安二郎監督へのオマージュを込めて1983年の東京を撮影した一作。景色のみならず、小津映画の常連だった俳優の笠智衆などにインタビューもしている。https://video.unext.jp/title/SID0044251